理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

「みんなの意見」は案外正しい

「だってみんながそう言ってるもん」は、破壊力抜群なくせに反論が難しいので嫌いなのだけれど、この本はその「みんなが言ってるもん」に論拠と根拠を与えてくれる本。かのThe wisdom of crowdsの邦訳で、もうちょっとタイトルが良い感じだったらもうちょっと売れたんじゃね?という気がしなくもない。大きなお世話ですかそうですか。


主題は、「個人の知恵より集団の知恵のほうが賢い(ことが多い)」ということと、「その賢さは、一定条件が満たされたときに達成されるもので、条件が満たされない場合は逆に衆愚に陥る」ことのような気がしました。条件ってのが以下の4つ。


意見の多様性(それが既知の事実のかなり突拍子のない解釈だとしても、各人が独自の指摘情報を多少なりとも持っている)、独立性(他者の考えに左右されない)、分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)、集約性(個々人の判断を集計して集団として一つの判断に週や気宇するメカニズムの存在)


特に2つ目、独立性に違和感があったのですが、それは人の意見に左右されないことというのが結果として個人の成長を妨げる気がしたから。ただそれは集合知的にはオッケーで、集団として賢くあればいいということらしい。むしろ、全員が賢いよりは、賢い人と賢くない人が合わさるほど、集団としては賢くなると。


んじゃ衆愚に陥る場合ていうのはどういうことかというと、独立性が保たれない場合。特に小さい集団の場合それが顕著で、ほら、話し合いの場とか学校でも会社でもあると思うのですが、声の大きい人っているじゃないですか。そもそも集合知は、意見の集約があって初めて作られるものらしいのですが、そういう人が意見を出すと、他の人は自分の意見をそこに集約する前に、その意見に対する「判断」を重ねてしまうらしく。あるいは、小さい集団であるからこそ、その意見に影響されてしまうものらしく、その集団は判断を誤る結果になるんだってさ。そういう意味では、この4条件を満たす一番効率の良い方法はコンピュータでありネットであって、それを実現しているのがgoogleであると、そういえば「web進化論」はそういうことを言ってた。


じつはこの話、最後にオチがあって、この本を書店に買いに行った時、この本って置かれてなかったのね。これって上の4つの条件が全て満たされた上で、「みんな」という集団が「この本面白くねぇ」という集合としての判断を下したってことですかね。