理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

暗号解読(下)

ぼくは暗号解読(上)を読んだ後、「おもしろいけど、それでもフェルマーの最終定理のほうが上だなー」とか身近な人につぶやいていたのでした。下巻を読み始めてもその印象はそれほど変わりはしなかったのだけど、VIII章でその印象は大きく変わったりしました。

範囲

下巻の範囲は、エニグマ暗号が解かれた後の第二次世界大戦から今までです。ただまぁ間にヒエログリフの解読のお話が挟まっていて、16世紀とかまで戻ることはあった。


第二次世界大戦でアメリカが使っていた暗号の話はそこそこおもしろくて、その暗号はナヴァホ暗号とかいう。

ref:ナヴァホ暗号 Navajo Code cipher

それまでの暗号のほとんどはエニグマに代表されるような換字暗号で、その換字を行うにはとんでもない手間が必要とかでたいへんぽいみたいなんですけど、ナヴァホ暗号はちがう!!そんじょそこらの暗号とはク オ リ テ ィ が ち が う !!

なんてったってナヴァホ族が普通に話す言語だものwww通訳ですやんwwwそりゃ早いよwwww

その彼ら*1が三週間をかけて必死に取り組んだにもかかわらず、ナヴァホ暗号は解読できなかった。(中略)
「軟口蓋音や、鼻音や、舌のもつれるような音が続く奇妙な言葉で……解読するどころか書き取ることさえできなかった。」

日本海軍涙目www

暗号が解かれているかどうかも暗号化されている

これは上下巻にわたってのことですけど、RSAとかのお話で特に思ったりしました。RSAというと超有名な公開鍵暗号で、その名前の由来はリヴェスト、シャミア、アドルマンという3人のRSAの発明者から、というのはわりかし有名な話だったりしますが、実際のところRSAというか公開鍵暗号はそれ以前にすでに発明されていたという話がでてきます。発明者が属していたのは英国政府通信本部。通信の秘密というのは戦略上重要みたいなので、ずっとその事実すらも隠蔽されてきた、みたいな。これと同じような話はエニグマのときも出てきて、解読者が日の目を浴びたのは数十年後とか。こうなるともう、暗号が解かれているかどうかすら暗号化されてるみたいな感じですね。


こういうのを見ると、もしかしてもしかしたら、RSAとかなんか実はもう余裕で解かれていて、NSAとかが余裕で盗聴しまくってるみたいな気になりませんか?なりませんかそうですかそれはよかった。

量子論がアツい

この本の最後は量子暗号で締めくくられているのですけども、それが冒頭に述べたVIII章です。修士1年のときになんかの講義で量子暗号をスライド2枚程度でプレゼンした記憶があるのですけど実はあんまし分かってなくて、webサイトで得た知識を簡単に言ってただけですね。全然理解しないままお話してた。たぶん必死で聞いていた人はいないのであんまし本気でお疲れ様とか言いませんけども、必死に聞いてた方々におかれましてはたいへんお疲れ様でした。この本を読むと分かってないにもかかわらず量子暗号をすごく分かった気にさせてくれるので、ご一読されるといいですね。


で、量子論なんかホントおもしれーとか思った。シュレーディンガーの猫とかあるじゃないですか。観測後は生きてるか死んでるかの二者択一なのに観測するまでは生きてるし死んでもいるネコ。。考えとしてはアリとは思うんですけども、あれってどうなの真理なの?

あとなんていうんですか多世界解釈って言うんですか?極端な話ぼくが明日の一歩を右足で踏み出すか左足で踏み出すか迷ってたら、その時点で右足で踏み出す宇宙と左足で踏み出す宇宙っていう2つの宇宙ができますね、みたいな。本気でさ、このへんになると理解できない。頭ではなんとなく分かっても、直感として捕らえられない。そういう話をしている量子論が、どんな理論よりも成功を収めている実用的な理論って書いてある。すげぇ。まず理解できる時点ですごい。理解できる人を理解できない!ぼくたちはもっと量子論学者に敬意を払うべきだとおもいます。

*1:日本兵