理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

社会人になった後の数年で急激に成長したという自己評価の大半は気のせいであるという説

ぼくは毎日ネットストーキングして遊ぶみたいな屈折したかんじですから、そんなおまえの経験論を一般化する価値が果たしてあるのかといわれると答えに窮してしまうんですけど、経験上、社会人になっての数年間に感じる「おれって急激に成長してるよな」感は気のせいだと思います。

例え話をします

社会人になるということは、年次的にも(研究室内での)権力的にも、ある程度の権力を得た大学生活から、ある意味一気に最下級兵隊になるということを表します。言ってみれば、小学生のときサッカークラブではエースだったスポーツ万能のごん太くんが、中学生になって野球部に入部すると、初心者としてボール磨きを命じられてるみたいなかんじですね。
多分ですけど大半の新卒入社の人とかは、ごん太くんみたくサッカー部→野球部みたいなパラダイムシフトを経験する。ですから当然、これまでにサッカー部で積み上げてきたものを破壊して、野球部員として一から積み上げていく思考になります。ごん太くんは野球の初心者ですから、野球のルールを知らないし、守備位置とか連携の仕方も知らない。がんばれごん太くん!! みんなもごん太くんを応援しよう!!!!!

ここで、新たな登場人物としてひょろ太くんを考えましょう。ひょろ太くんは頭の良さも体格もほぼごん太くんと同じで野球も初心者ですけど、とてもひょろい。小学生のころは理科クラブに所属、アルコールランプでべっこう飴を作りまくってたけど、一念発起して中学から野球部に入ることにした。口癖は「もうぼくはだめです」で、15 m 全力疾走すると体力の限界を迎えて 30 分の休憩が必要になる。でもじつはごん太くんと同じくらい頑張りやさんで、ごん太くんと同じくらい一生懸命なんだ。

二人とも野球に関してはまるで初心者で、ゼロからのスタートなんだけど、たぶんどっちがレギュラーに近いかっていうと、ごん太くんだと思います。これってなんでなんでしょうね。

貯金があります

ごん太くんがひょろ太よりもレギュラーに近いのは、小学生時代にサッカー部に所属していたという貯金があるからです。野球とサッカーってまるで違うスポーツだけど、実は共通する部分っていうのがいくつかある。体力だってそうだし、大事なときは大きな声で意思疎通を図るっていうのもそうだし、先輩・後輩の上下関係を弁えるっていうのも重要でしょう。ごん太くんもひょろ太くんも野球のルールを知らないから、最初のうちは同じゼロからのスタートだと思ってるし、回りからもそう見えることが多いかもしれない。ルール知らんから、打った後 3 塁に向かって走り出すし、二死満塁の場面で送りバントしようとしたりする。でも、二人がルールを知った後っていうのは、少なくともひょろ太が体力を付けるまでの間、ひょろ太よりかごん太くんの方が圧倒的に優れたプレーヤーだと評価されるんじゃないでしょうか。

会社も同じだと思う

会社にもやっぱし、その会社独自のルールがあります。なんかよくわからん言い回しをしていたり、明文化されていない暗黙のルールみたいなのがわんさかある。そういうのを知らないヤツは、あいつマジ役にたたねーよなー、物事ぜんぜん知らねーしよー、おまえら全然生産性ないのに給料だけもらってるってことを自覚しとけ、みたいなかんじに見られたりする。ルールを知らない限りは、そのルール上で運営される集団のなかでやっていうのは難しいわけです。当然、その間、自己評価も下がる。なんでこんなにぼくは仕事ができないんだろう、みたいなかんじで心を病んだりするかもしれません。
でもさ、きっと、ルール知ったら全然違うんだと思うんですよ。やっぱし、大学とかで身につけた事柄の中で仕事に使えることって山ほどある。使える貯金ってたくさんあるはずなんだ。ただ、それを使うにはルールを知ることが必要で、そのルールを知らない間、自己評価が低いだけだと思うんですよ。

だから、ルールを知るだけで全然見える世界が違ってくる。広がる。貯金が使えるようになる。低い自己評価から、相対的に高い自己評価に変わるから成長してる感を感じるかもしれないけど、その成長っていうのはおまえがずっと前からしていた成長なんだ。もちろん社会人になってからの成長分はあるだろうけど、全てが社会人になってからの成長ってわけじゃない。

つまるところ、社会人になった後の数年で急激に成長したっていう印象の多くは、単なる過小評価なだけじゃないかな。