理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

内積と固有値問題

内積

ベクトル空間\mathbf{V}の2つの元\mathbf{a},\mathbf{b}に対して実数(\mathbf{a},\mathbf{b})が対応し、次の性質を満たすとき、\mathbf{V}に内積が与えられたといい、(\mathbf{a},\mathbf{b})\mathbf{a}\mathbf{b}の内積と言う。

  1. (\alpha \mathbf{a}+\beta \mathbf{a}',\mathbf{b})=\alpha (\mathbf{a},\mathbf{b})+\beta (\mathbf{a}',\mathbf{b})
  2. (\mathbf{a},\mathbf{b})=(\mathbf{b},\mathbf{a})
  3. (\mathbf{a},\mathbf{a})\geq 0 ここで等号は\mathbf{a}=\mathbf{0}

内積が与えられたベクトル空間を計量をもつベクトル空間(あるいは、内積空間)という。内積空間の元\mathbf{a}に対し、||\mathbf{a}||=\sqrt{(\mathbf{a},\mathbf{b})}\mathbf{a}のノルムという。
\mathbf{R}^nにおける、\mathbf{a}=(a_1,a_2,\cdots,a_n), \mathbf{b}=(b_1,b_2,\cdots,b_n)に対し、(\mathbf{a},\mathbf{b})=\sum_{i=1}^na_ib_iとおくと、(\mathbf{a},\mathbf{b})は内積を与え、このとき\mathbf{R}^nをn次元ユークリッド空間という。

\mathbf{V}を内積空間とするとき、\mathbf{a},\mathbf{b}\in \mathbf{V}に対し(\mathbf{a},\mathbf{b})=0が成り立つとき、\mathbf{a}\mathbf{b}は直交するという。

n次元の内積空間\mathbf{V}の基底\{\mathbf{e_1},\mathbf{e_2},\cdots,\mathbf{e_n}\}

  1. (\mathbf{e_i,e_j})=0\;(i\neq j)
  2. ||\mathbf{e_i}||=1\; (i=1,2,\cdots,n)

を満たすとき、正規直交基底という。

固有値問題

ある\mathbf{0}でないベクトル\mathbf{x}Tによって\lambda倍に移される状況がおきるとき、すなわちT\mathbf{x}=\lambda\mathbf{x}が成り立つとき、\lambdaTの固有値という

\mathbf{V}に1つの正規直交基底を取って、\mathbf{V}\mathbf{R}^nを同一視する。このとき、T\mathbf{R}^nから\mathbf{R}^nへの線型写像として、n次の正方行列Aによって表される(とする)。
\mathbf{R}^nの基底ベクトルを\{\mathbf{e_1},\mathbf{e_2},\cdots,\mathbf{e_n}\}とし、O=\left(\mathbf{e_1},\mathbf{e_2},\cdots,\mathbf{e_n}\right)と表すと、O\{\mathbf{e_1},\mathbf{e_2},\cdots,\mathbf{e_n}\}への基底変換の行列となり、B\mathbf{x}=O^{-1}AO\mathbf{x}=\lambda\mathbf{x}というBが定義できる。
ここで、

n次の正方行列Aが直交行列によって対角化可能となるための必要十分条件は、{}^tA=Aが成り立つことである

今までは実数を考えてましたが、次回からはこれを複素数にまで展開する話になるようです。ようやく複素ベクトル空間でてくるな。