理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

剛体の回転

ISBN:4-00-007711-2:detail

というわけで遅々としながらも進んでいるファインマン物理学なのだけれど、ようやく剛体まできました。剛体と振動がおわったら、第一部である力学がおわって、第二部の光・熱・波動にすすむ感じです。
ぼくが高校(高専)で物理を学んだときは、慣性モーメントとはこういうもんなんじゃーみたいな講釈があってあとは計算問題みたいな感じだったのですが、やっぱり自分から学ぶようになるといろいろな発見ができて良いです。
とりあえず、今日は平面前提で。

質量中心

で、まずは剛体の回転の前に質量の中心についてです。物を放り投げれば、その物は放物線を描いて最終的に落下するわけですが、その「放物線」を描くのが物体の質量中心です。

いままでは理想上の質点に関する議論が続いていましたが、今回は「たくさんの小粒子、原子から成り立っている」ような物体があり、各粒子にはいろいろな力がはたらいているものとします。もし、粒子それぞれに iという番号をつけたとすると、i 番目の粒子に働く力は、運動方程式から F_i=m_i\frac{d^2r_i}{dt^2} になります。ここで相対論的な異常な速さを考えないことすると、m_i という質量は不変と考えられるので、微分の中に入れることができます。
その状態で、物体全体に働く力を考えますと、
\sum_i F_i = F = \frac{d^2\left(\sum_i m_ir_i\right)}{dt^2}
になります。

ここで、R=\frac{\sum_i m_ir_i}{M} というベクトルを考えますと、上の式のFについては、F=\frac{d^2(MR)}{dt^2} とできることがわかります。つまり、この物体全体の位置というのを R と 1 つのベクトルで考えることができまして、この R こそが質量の中心で、放物線を描く点として考えることができます。

回転

で、点でなく、大きさを持ち、かつ、形が変化しない剛体を考えますと、(質量中心となる)点としての運動とともに、回転という運動を考慮することができます。
回転を表すのに、座標以外の何かが必要なわけですが、回転するからには回転する際の軸というものが必要なわけで、この軸に対してどれだけ回転したかという角度があれば、回転運動を表すことができます。これ、ちょうど変位に対応するわけで、その対応関係から言えば、

変位 s 角度 \theta
速度 v=\frac{ds}{dt} 角速度 \omega=\frac{d\theta}{dt}
加速度 a=\frac{dv}{dt} 角加速度 \alpha=\frac{d\omega}{dt}

という関係になるわけです。


で、この位置と速度、回転の関係から言えば、力に対応する何かがあればもうすこし話がしやすくなります。
仕事っていうのは力と、力によって動いた距離の積で定義されます。一方、回転という立場において、変位に対応するのは角度なわけで、角度×「力に相当するもの」が仕事という風に定義できると美しいです。実際できます。で、この「力に相当するもの」をトルクと呼ぶことにします。
トルクについては、一応、図を書けば座標(x,y)と角度\thetaで表現できるんですけど、図を書くの面倒なのでやめておきます。
トルクというのは 1 つの(理想的な)粒子に対して働くものなので、粒子の集合体としての剛体についてはどうなるの、という問題にぶちあたるわけですが、力と同じで、というか力も同じだからこそ、各部分に働くトルクの総和として考えることができます\tau = \sum_i \tau_i


力に相当するトルクが登場しました。ここで、相対論的速さを考えなければ、力F=ma=\frac{d(mv)}{dt}=\frac{dp}{dt}なわけで、力というのは運動量の変化の割合と考えられます。では、回転の世界のトルクも何かの変化の割合と考えられないか、という感じで角運動量が定義されます。これも、図があれば、座標(x,y)とかで示せるんですが、面倒なので諦めます。


剛体に加えられる全トルク\tau があるので、剛体の持つ全角運動量というものも定義できます。トルクがなければ角運動量が変化しないのは定義から自明なので、角運動量は保存します。

慣性モーメント

でまぁ、角運動量とは何ぞやという話に戻るのですが、かつ、端折りまくったのですが、回転軸からの距離を r_i、その点の速さをv_iとすると L_i=m_iv_ir_i です。さらに v_i=r_i\omegaであることから考えると、L_i=m_ir_i^2\omegaという式で表すことができます。
全角運動量はっていうと、L=\sum_i L_i=\left\(\sum_im_ir_i^2\right)\omegaというわけでp=mvと対比させると、I=\sum_im_ir_i^2っていうものがでてくるわけですね。これが慣性モーメントで。これを元に第 19 章「質量の中心;慣性モーメント」へ続く。