理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

「スクラム現場ガイド」を読んだ

スクラム現場ガイド、控え目に言って最高でした。

スクラムに取り組みはじめた森羅万象、ミドリムシからシロナガスクジラまで生きとし生けるものすべてが読み、心を震わせ、そして流した涙がベロシティの向上として結晶化すると良いと思います。

出会い

この本は、一年前(もう一年前か…)にスクラムマスターとしてプロジェクトをすすめることになったときに、 @tenten0213 さんにおすすめの本を相談したときに教えてもらった本のひとつでした。 kiririmode、いまさら感想を書くのかよという説はありますが、この本は本当に本当に良かったです。 (他に、アジャイルな見積りと計画づくり もめちゃくちゃ良かったんですが、これはまた後日)

誰のための本なのか

ほら、スクラムってむずかしいじゃないですか。 第1章の冒頭にも

スクラムには華麗に騙される。フレームワークの中でも一番理解しやすい部類なのに、ちゃんと実現するのは最大級に難しい。

ってあったりします。

なんかアジャイルソフトウェア宣言とかあるけど、 そもそもここで言われていることを読むとるのって結構むずかしいし、それを実践しようにも "How" の部分だったり、"How" に至るための根底の考え方が なかなか分からなかったりするじゃないですか。 だから、他のスクラムチームのやりかたも参考にしたいけど、なかなか敷居が高かったり、すでにうまく回っていたりするので「どうやって」そこに到達させたのかという生みの苦しみの部分を 知ることができなかったりするじゃないですか。

この本は、そういうぼくとあなたのための本です。

たとえば、プロジェクトがはじまってないのに、「ベロシティってどのくらいでる?」とか聞かれるときってありますよね。 これだけの機能「いつまでに」作り終えられる?って聞かれることありますよね。 人少ないし開発チームは開発に集中してほしいからプロダクトマネージャとスクラムマスター兼任したらいいんじゃね?みたいな状況とか、 スプリントゴールを達成できない状況が続いて「やっぱりスプリントが短かすぎるんじゃないか」とか悩む状況とかありますよね。ありませんかそうですか。

本の構成

物語

この本は 30 章くらいから構成されているんですが、基本的には各章は、仮想のプロジェクトで起こる困った状況を示す「物語」からはじまります。 この「物語」では、あーあるよね、あるある、という状況に陥ったスクラムマスターなり開発チームなりが、その状況にどう立ち向かったのか、って話が綴られます。 もちろん良い話だけではなくて、例えばスクラムの文化に合わない人をチームから切り離したりする話もあったりします。

モデル

そして、その物語を開発プロセスの原則論で振り替える「モデル」が続きます。 ここを読めば、なぜ「物語」はそういう経緯を辿っていったのか、どのあたりが分水嶺だったのかといった気付きを、スクラムの考え方とともに得ることができます。 とあるスクラムチームは、なぜスプリントの後半に過負荷になるのかとか、そもそも「出荷可能なソフトウェア」って何だよとか、 ぼくはこの本ではじめて気がついた気がします。

成功の鍵

そして章の最後を飾るのが「成功の鍵」です。これは、成功の鍵です、はい。

読んでみて

アカデミックというよりは(タイトルのとおり)現場主義的な本で、「あ〜〜あるある〜〜〜〜」という物語が満載な本でした。 言い換えれば、自分がスクラムで経験した悩みが、本の中でも同じ悩みとして展開されていて、そしてそれに取り組む別のスクラムチームの判断、決断を追体験できるという意味で、 並の小説よりもずっと面白かったです。そしてもちろん面白さだけでなく、フィードバックサイクルの大切さ、人への物事の伝え方の重要さ、スクラムを生かすための考え方など、 本当に多くのことが学べました。

冒頭に書いたように、この本を読んだからといってうまくいくほどスクラムは甘くないのですが、それでもスクラムに取り組む有機生物はこの本を読んだら有機生物としてさらなる進化を遂げられると思うし、 ぼくのスクラムに関するおすすめ書籍であり続けるだろうなと思います。

ホントにすごいよかった。まじで。