以前、GitHub CopilotのカスタムエージェントでZettelkastenを効率化する話を書きました。GitHub Copilotは定額制だから、使用量を気にせず記事や議事録からzettelを抽出できて、これが思った以上に便利でした。
ところが、です。
満員電車の中で技術記事を読んでいると、「これzettelにしたいな」と思うわけです。でも、混雑した車内でMacBookを広げるわけにはいきません。寝る前、布団の中で読書していると、妙に良いアイデアが浮かぶわけです。だけど、わざわざ起き上がってPCを開くのは億劫すぎます。
こういうとき、「ああ、iPhoneでzettel作れたらなあ」と何度思ったことでしょうか。 アイデアというやつはどうにも気まぐれで、PCの前に座っているときには出てこないくせに、移動中や風呂に入っているときに限ってやってきます。そして、「あとで整理しよう」と思った瞬間、きれいさっぱり忘れます。これを何度繰り返したことでしょうか。
そこで、iPhoneやPCなど、どこでもzettelが作れる仕組みを作ることにしました。Obsidianのモバイルアプリ、Obsidian Gitプラグイン、iCloud、Claude Code on the Web。これらを組み合わせることで、「第二の脳」を本当の意味で持ち歩けるようになります。
PCの前でしかzettelが作れない、という不自由
前回作った仕組みは、確かに便利でした。GitHub Copilotのカスタムエージェントに記事を投げると、「ここは1つのzettelにできますね」「この論点は別のzettelにしましょう」と、原子的なzettelの候補を出してくれます。
使用量制限を気にせず使えるのも良かったです。Claude Codeだと、「ああ、また制限か」と思いながら使うことになりますが、GitHub Copilotは定額制です。気兼ねなく使えます。
知識の蓄積スピードは確実に上がりました。Obsidianのグラフビューを眺めると、zettel同士のつながりがどんどん増えていきます。「お、この概念とあの概念が実はつながってたのか」という発見もあります。
だけど、問題がありました。PCの前に座っていないと、何もできないのです。
PCの前に座っているとき、僕の頭はだいたいYouTubeの次に観る動画のことでいっぱいです。「あの実況動画の続き観たいな」とか「あの解説動画、ブックマークしたけど結局観てないな」とか。そういうときに限って、良いアイデアは浮かびません。
逆に、満員電車で身動きが取れないときとか、妙に冴えた発想が出てきます。「あ、そういえばあの記事で読んだ概念、あれと組み合わせたら面白いんじゃないか」とか。だけど、そういうときに限ってPCがありません。
メモ帳アプリに殴り書きしても、結局あとで見返しません。「整理しなきゃ」と思っているうちに、Xのタイムラインを眺めていたら1時間経っていて、何をメモしたかったのかさえ忘れています。知見が流れていきます。もったいない。
どこでもzettelを作る仕組み
そこで、いくつかの技術を組み合わせて、iPhoneでもzettelが作れるようにしました。

全体像はこんな感じです。iCloudで基本的なデバイス間同期を確保しつつ、GitHub経由でClaude Codeと連携します。それぞれのツールについて、順に説明していきます。
Obsidian モバイルアプリ
Obsidianには、iOS向けのモバイルアプリがあります。
デスクトップ版と同じvaultを扱えますし、コミュニティプラグインも動きます。つまり、PCで使っているのとほぼ同じ環境が、iPhoneでも使えるわけです。
電車の中でObsidianを開いて、zettelを作ります。リンクを張ります。タグをつけます。PCでやっていることが、そのままiPhoneでもできます。
iCloud - デバイスを意識しない同期
ObsidianのvaultをiCloud Driveに置くと、PCとiPhone間でファイルが自動同期されます。
これだけで、基本的なモバイル連携は完結します。iPhoneで作ったzettelが、PCでも読めます。逆も然りです。
デバイスを意識する必要がありません。「あれ、このzettelってiPhoneに同期されてたっけ?」と心配することもありません。常に最新の状態です。
iPhoneでシンプルなメモを取るだけなら、ObsidianとiCloudの組み合わせで十分です。
Claude Code on the Web - AIの力を借りる
ところが、複雑な整理作業となると話は別です。長い技術記事から複数のzettelを抽出したり、関連性を分析したり。そういうときは、AIの力を借りたくなります。
そこで登場するのがClaude Code on the Webです。
これはブラウザから使えるClaude Codeで、GitHubリポジトリと連携できます。スマートフォンのブラウザからも使えるのがミソです。
iPhoneのSafariでClaude Code on the Webを開いて、「この記事からzettelを作って」と指示します。Claudeが内容を分析して、zettelの候補を作り、Pull Requestとして提案してくれます。
提案をレビューして、良ければマージします。するとGitHub経由でObsidianに同期されます。
Obsidian Git プラグイン - Claude Code連携の要
Claude Code on the WebはGitHubリポジトリと連携します。つまり、ObsidianのvaultをGitHub管理下に置く必要があります。
そこで使うのがobsidian-gitというコミュニティプラグインです。これを入れると、モバイルアプリからGitHubへpush/pullできるようになります。
自動同期の設定もできるので、意識しなくても勝手にコミット&プッシュしてくれます。
iCloud同期とGitHub同期が組み合わさることで、Claude Codeで作ったzettelが、iCloud経由で両デバイスに届く仕組みが完成します。PCでgit pullすれば、iCloud同期でiPhoneにも反映されます。逆も然りです。
ワークフロー全体像
この仕組み全体のワークフローを図にすると、こんな感じになります。

長い記事や複雑な内容をzettel化する際の流れです。Claude Code on the Webに記事を渡すと、AIが分析してzettelの候補を作り、Pull Requestとして提案してくれます。レビューしてマージすれば、GitHub経由でObsidianに同期されます。
実際の使い方
長い技術記事を読みました。面白いけど、これをzettelにするのは骨が折れそうです。複数の論点が絡み合っていて、どう分解すればいいか悩みます。
こういうときはClaude Code on the Webに任せます。iPhoneのブラウザで開いて、GitHubリポジトリと連携。「この記事からzettelを作って」と指示します。
Claudeが記事を分析して、zettelの候補を複数作ってくれます。Pull Requestとして提案してくるので、iPhoneでレビューします。「これとこれはまとめたいな」とか考えながら調整して、マージします。
気づいたらObsidianに同期されています。zettelの完成です。
脳を外出しする、という発想
スマートフォンを家に忘れて出かけたときのことを思い出してみてください。待ち合わせ場所がわかりません。相手の電話番号も覚えていません。何時に約束していたか曖昧で、道にも迷います。そもそも今日が何月何日なのかすら、カレンダーアプリを開かないと自信がありません。
アニメ「PSYCHO-PASS」に、こんなセリフがあります。
自分の生活をそこまで電子的な生活に委託しているのにサイボーグではないと言っても説得力ありませんよ。あなたにとって携帯端末はすでに第二の脳だ。違いますか? 科学の歴史は人間の身体機能の拡張。つまり、人間機械化の歴史と言っても差し支えない。だから、程度の問題なんです。
アニメ「PSYCHO-PASS」泉宮寺豊久
その通りです。僕たちは記憶、計算、判断といった認知機能の多くを、スマートフォンに委託しています。正直、自分の生年月日すら怪しいです。サイボーグ化は0か100かの話ではなく、「程度の問題」です。そして、僕はもう委託していいと思ってます。
「頭の中で整理しよう」なんて無謀な試みです。脳内RAMの容量不足が深刻です。だから、脳を外出しするしかありません。Zettelkastenによるナレッジ管理は、まさにこの「第二の脳」の中核です。思考を外部化して、整理して、つなげていく。脳の記憶と思考のネットワークを外部に拡張しないといけない。
モバイル化して何が変わったか
この仕組みを使い始めて数週間。変わったことをいくつか挙げてみます。
まず、知識が逃げなくなりました。以前は「あとでまとめよう」と思って忘れることが多かったのですが、今はその場でzettelにしてしまいます。電車の中で読んだ記事も、布団の中で浮かんだアイデアも、全部zettelになります。
PCを開く億劫さがなくなったのも大きいです。「ちょっとzettel作るためにPC起動するのは...」という心理的ハードルが、実は知識管理の最大の敵だったことに気づきました。iPhoneならさっと開けます。
最後に
Zettelkastenは「第二の脳」です。
だからこそ、常に持ち歩けるべきですし、いつでもアクセスできるべきです。PCの前に座っているときだけ使える第二の脳では、あまりに不便すぎます。
Obsidian Git、iCloud、Claude Code on the Webを組み合わせることで、「どこでも使える第二の脳」ができました。移動中、休憩中、ふとした隙間時間。どんなときでも思考を整理して知識を蓄積できます。
知識管理は、特別な時間を作ってやるものではありません。日常生活の中に溶け込んでいるべきです。そういう自然な流れが作れたとき、Zettelkastenは本当に機能し始める気がします。
