理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

ラスパイレス式とパーシェ式

指数とは何か

時系列データの解析において、ある時点を基準として時系列間の値の大きさを揃えることを指数化と呼びます。 前年比や前月比のように観察する時点とその直前の時点の値の比率をとったものが「連環指数」です。一方で、観察しようとするすべての時点に関して、同じ時点の数値を基準とした指数化を「固定基準指数」と呼びます。

指数の表現

指数には代数的な省略記号があります。ここでは価格指数を例にとると、$t$時点における第$i$品目の価格、数量をそれぞれ$p_{ti},q_{ti}$で表します。

基準時$t=0$における生産額の合計は以下の式で表現されます。

$$ \sum_{i}p_{0i}q_{0i} $$

また、任意の時点$t$における生産額の合計も以下の式で表現されます。

$$ \sum_{i}p_{ti}q_{ti} $$

従って、基準$t=0$に対する任意の時点$t$における指数は以下のようになります。

$$ P_{L(0,t)}=\frac{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}}{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}} $$

ラスパイレス式とパーシェ式

先ほどの指数$\frac{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}}{\sum_{i}p_{ti}q_{ti}}$は基準時($t=0$)の数量で総合したものであり、これを「ラスパイレス(Laspeyres)式」とよび、$P_{L(0,t)}$で表します。

ラスパイレス式と名前がついているということは、他の名前で呼ばれる指数もあります。そのうちの代表的なものがパーシェ(Paasche)式で、基準を比較時の数量$q_{ti}$によって表したものです。

$$ P_{P(0,t)}=\frac{\sum_{i}p_{ti}q_{ti}}{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}} $$

両者の指揮を折衷したものもあり、それはフィッシャー(Fisher)式と呼びます。フィッシャー式は、ラスパイレス式とパーシェ式の幾何平均をとったものです。

$$ P_{F(0,t)}=\sqrt{P_{L(0,t)}\cdot P_{P(0,t)}} $$

ラスパイレス式とパーシェ式はどちらが動向観察に有効なのか

観察しようとする任意の時点$t$とその直前の時点$t-1$の間を比較することを考えます。

ラスパイレス式の場合は以下の式のようになります。これは、観察する時点とその直前の時点がともに基準時の数量で評価されており、指数の意味が明確です。

$$ \frac{P_{P(0,t)}}{P_{P(0,t-1)}}=\frac{\frac{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}}{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}}}{\frac{\sum_{i}p_{(t-1)i}q_{0i}}{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}}}=\frac{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}}{\sum_{i}p_{(t-1)i}q_{0i}} $$

一方で、パーシェ式の場合は以下のようになり、簡単になりません。比較時点における異なる数量で評価されているため、その影響が式の中へ含まれることになります。

$$ \frac{P_{P(0,t)}}{P_{P(0,t-1)}}=\frac{\frac{\sum_{i}p_{ti}q_{ti}}{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}}}{\frac{\sum_{i}p_{(t-1)i}q_{(t-1)i}}{\sum_{i}p_{(t-1)i}q_{0i}}} $$

結局、同行観察の場合においてはラスパイレス式の方が有効であると考えられています。

加重平均法で見るラスパイレス式

ラスパイレス式は以下のように変換できます。

$$ \begin{eqnarray} P_{P(0,t)} &=& \frac{\sum_{i}p_{ti}q_{0i}}{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}} \newline &=& \frac{\sum_{i} \left( p_{0i}q_{0i}\cdot \frac{p_{ti}}{p_{0i}}\right) }{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}} \newline &=& \sum \left( \frac{p_{0i}q_{0i}}{{\sum_{j}p_{0j}q_{0j}}}\cdot \frac{p_{ti}}{p_{0i}}\right) \end{eqnarray} $$

ここで$w_{i}=p_{0i}q_{0i}$としたとき、式中の$\frac{p_{0i}q_{0i}}{{\sum_{i}p_{0i}q_{0i}}}=\frac{w_{i}}{\sum w_{i}}$は品目$i$のウェイトにもなっている。

つまり、ラスパイレス式は$s_{0i}=\frac{p_{0i}q_{0i}}{\sum p_{0i}q_{0i}}$としたとき、以下のような加重平均になっていると見ることができる。

$$ P_{P(0,t)} = \sum s_{0i}\frac{p_{ti}}{p_0i} $$

参考文献