理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

「先送り0(ゼロ)」を読んだ

「先送り0」を読みました。

タスク管理とTaskChuteCloud

タスク管理というやつは本当にいつまで経ってもついてくる未解決の課題であって、まぁ人生続く限り解決することはなさそうです。 それでも何かに縋らなければ、自分を支えるフレームワークみたいなものを見つなければただ一人苦しむだけなので、皆さんもそれを探すのに一生懸命なことでしょう。

僕はこの辺りのタスク管理フレームワークはGTD (Get Things Done)から入り、 そのあとはずっと、佐々木正悟さん、大橋悦夫さんのタスク管理本に感銘を受けてタスクシュートを使ってきました。

タスクシュートの実践に関してもさまざまなアプリを試しつつ、今はTaskChuteCloudを使っています。

そして、その佐々木さんと、TaskChuteCloud開発者のjMatsuzakiさんが共著で「先送り0」を出版されたので、早速読んでみたというのが流れ。

先送り0

書籍の背景に流れる思想は「限りある時間の使い方」によく似ています。

「限りある時間の使い方」では「未来の奴隷として今を生きるな」という旨のメッセージが貫かれていましが、先送り0でも冒頭で以下のようなメッセージングがなされています。

しかしそれでも私たち人間は「時間がなくなる」のを恐れます。いままでそうした経験などまったくなくても不安に感じるのです。なぜなのでしょう? それは、未来に生きてしまっているからです。将来をイメージしたり、理想的な未来を思い描いたり、目標や計画を立てたりすることで、未来に生きているからです。人生において未来に生きる時間が長くなってくると、遅かれ早かれ「時間がない」という信念と恐怖に浸されるようになります。

jMatsuzaki; 佐々木 正悟. 先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す「1日3分!」最強時間術 (p.7). 株式会社技術評論社. Kindle 版.

ただし、先送り0では、そのメッセージを主眼に置いているのではありません。 今を真剣に生きるためには心の余裕が必要であり、心に余裕を持つためには「時間はある」という信念が必要であり、そして、その信念を支えるための具体的な根拠の積み重ね方を提示してくれるという本になっています。そういう意味では、先送り0は「限りある時間の使い方」の補完書としても位置づけられるのかもしれません。

タスク管理の罠

一般的なタスク管理は、ゴールを設定し、そのゴールに向かって行うべきタスクをリストアップし、それをこなしていくというものです。 しかし、そのやり方を行なっていくと大体の人は挫折します。生成されたタスクリストは予想外の出来事に対して弱く、メンテナンスコストが膨大です。 コストは単なるメンテナンスだけでなく、メンタルにもかかります。タスクリストを見るたびに「やらなければならないことがたくさんある」というストレスが生じ、いつしかそのストレスを避けるために、 タスクリストに向き合うことすらやめてしまいます。わかる、わかるわ。GTDにおける最大の苦痛は週次レビューだわ。

順算のアプローチはアジャイル的

そしてこの本では、上記のような一般的なタスク管理を「逆算」と呼び、むしろ「順算」という「目の前の仕事に集中しながら、少しずつ結果を形にしていく」アプローチを提案しています。 理想を描くのではなく、一日一日できることを積み重ねていく。

なんだか都合よく聞こえるアプローチなのですが、非常にしっくりときたのは次の一言コメントでした。

しかしそうしたゴールが明確でない現実の人生ではどうしてもそうはいきません。「誰と結婚すると幸せになれるのか?」や「新商品の名前をどうつければ売り上げを伸ばせるか?」の「答え」はけっして「自明」ではないでしょう。「答え」がわからないのに「答え」から逆算するのは不可能です。

jMatsuzaki; 佐々木 正悟. 先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す「1日3分!」最強時間術 (p.62). 株式会社技術評論社. Kindle 版.

要するに、人生で取り組む事柄にシンプルなものはなく、多くはComplexなのだから、最初からタスクを洗い出せるはずがない。[Cynefin framework:wikipedia]でいうComplexな領域にある問題に対しては、逆算は不可能であり、順算のアプローチで取り組むしかない。自分自身の行動と結果でフィードバックループを形成しつつちょっとずつ進行させるしかないのかもしれません。 これは経験主義的なアプローチであり、アジャイル的だなと思いました。

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※画像はWikipediaより引用。

終わらせるより始めることが大事

アジャイルを成立させるためには、経験をし、その経験から学び、その学びを次の行動に反映させるというサイクルが必要です。終わらせることが大事なわけではなく、まず「始めて」経験をすること。そのために紹介されているアプローチが、本のタイトルにもなっている「先送りを0にすること」。

先送りを0にするための実践的なアプローチが、「タスクシュート」の技法を組み合わせながら説明されていきます。タスクシュートをすでに使っている身としても、なるほどタスクをそういうふうに扱えば心的ストレスが減るのか、という目から鱗の内容も多々ありました。

まとめ

純粋なタスク管理技法というよりも、それを行う「人の心」の機微を強く考慮に入れたスキームだと感じました。タスクシュートの実践方法を大きく変えるものではないものの、そのタスクに取り組む心構えを大きく変える本でした。

僕にとっては未だ時間は欠乏している存在ではありますが、それでも、心に多少でも余裕を持てるようになり、読んだ意味はあったと思います。