というわけで、Toggl を使って自分が何にどれだけの時間を使っているのかを理解するところから始めたいと思います。
自分が何にどれだけの時間を使っているのか
まず最初に、そして明確に認識しておかないといけないのは、「現状把握をまともに行っていない状態での"計画"はうまくいくはずがない」ということです。
時間は最も欠乏した資源であると言われますが、自分自身が、それを何に対してどのように使っているかを、明確に意識し理解できている人は、そう多くありません。
このことについて、今は亡きドラッガーも以下のように述べています。
通常、仕事に関する助言というと、計画することから始めなさい、というものが多い。まことにもっともらしい。だが問題は、それではうまくいかないことにある。
(中略)
私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。
もう少し具体的な話をしましょう。
みなさんが何かのプロジェクトに従事する上で、必ずそのプロジェクトのスケジュールというものが作成されます。そのスケジュール、どのように作成されているんでしょうか。よくあるパターンとしては、個々のプロジェクトを小さなタスクに分割して、個々のタスクにかかる時間を見積もって、その時間を足し合わせる、とかでしょうか。
さて、ここで質問です。個々のタスクにかかると"見積もった時間" の根拠はなんですか。
経験上、このあたりの見積もり時間は、「感覚」によって「ざっくり」算出されることが非常に多いです。したがって、そのプロジェクトのスケジュールは人間の「感覚」に大きく依存します。そして、人間の時間感覚は、驚く程に不正確で、外的要因に大きく左右されます。
> 空間感覚は、誰でも保てる。だがたとえ電気の明かりがあっても、何時間も密閉された部屋に置かれると、ほとんどの人が時間間隔を失う。経過した時間を過大に評価したり、過少に評価したりする。
プロジェクトは立案されたスケジュールに従って進んでいきますから、結局のところ不安定な人間の感覚によってプロジェクトの成否が左右されます。そしてその感覚に依存したプロジェクトが多くの人を巻き込み、不幸にします。そういうプロジェクトが至るところにある。どうみても不健全だろ。病理以外のなにものでもないだろ。なんなんだよいったい。PDCA とか偉そうなことを言ってるヤツが、そのベースとなるような記録を取っているのを見たことないけどどうなってんだよ。おまえのいう PDCA は感覚ドリブンかよ。
というわけで、時間の使い方を把握することが、スケジュール管理、タイムマネジメントの原点になります。
> 時間の記録の具体的な方法については、気にする必要はない。(中略)。重要なことは、記録することである。記憶によってあとで記録するのではなく、ほぼリアルタイムに記録していくことである。
デジタルツールの福音
かつてぼくは、ほぼ日手帳に時間の使い方を記録していたことがありますが、速攻で挫折しました。手で時間の使い方を逐一記録していくのは明らかに無理ゲーです。分単位のタスクなんて、手帳に書くことそのものが口数がかかりますし、一日のタスクなんてのは優に 100 に迫るというのに、そんなのを手帳に書いていくなんて無理です。
しかし今は、手元には iPhone があり、クラウドがあります。ボタンを押すだけで時間を秒単位で記録できるプラットフォームが、既に手元にまで到達している時代なのです。
というわけで、Toggl Track: Time Tracking Software for Any Workflow です。
Toggl は「時間の記録」に特化した非常にシンプルな Web サービスです。実際に記録していったとある休日の例(一部)がこんな感じ。
このような生活に密着させるべきサービスは、PC からだけでなく、携帯端末からもアクセスできなければ意味がありません。そして、そのアクセス方法は、時間がかかりストレスの溜まる Web アクセスではなく、あくまでアプリケーションとして記録し、後にバックグラウンドで Web サービスと同期を取るような形でないと実用に耐えません。
その点を Toggl はクリアしていて、iPhone アプリはシンプルだけど良い出来だと思います。
iPhone で記録したタスクの時間はほぼリアルタイムに Web サービス側に同期され、Web サービス側で記録したタスク時間も、ほぼリアルタイムに iPhone に同期されます。
会社でこのようなツールを使う場合、「kiririmode はずっと iPhone の画面をいじっている」というような悪評が立つおそれもありますが、ほぼボタンを押すだけで記録が可能なので、まぁ問題はないでしょう。
こういう記録を積み重ね、説得力のあるスケジュールの元で効率的にタスクをこなし、積み上がっていく残業を撲滅したいところですね。