理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

エンジニアリングとマネジメント

エンジニアリングに携わっていると「マネジメントは嫌だ」という声を聞く機会を多く聞く。それはそれで尊重されるべき考えだと思う。僕も色々マネジメントと呼ばれる業務が増えてきて、ウッて思うところはある。もっと設計・実装に携わっておきたい。エンジニアとして楽しいもんな。

それでもマネジメントはしていかないといけない。そもそも、エンジニアリングとマネジメントは二律背反なものでもない。でもそこになかなか踏ん切りがつかない。これは、そういう思いを言語化したエントリです。

マネジメントとはなんなのか

マネジメントを日本語にすると「管理」という言葉に訳されることが多い。Quality Managementは「品質管理」と訳され、Project Managementは「プロジェクト管理」と訳される。ただ、マネジメントについてドラッカーがどう言っているかというと、こんなことを言っている。

確かにマネジメントの役割は変わっていない。それは、共通の目標、共通の価値観、適切な組織、訓練と研鑽によって、人々が共同で成果をあげられるようにすることである。

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ!

「〜によって」の部分は手段であり、文章の幹は「人々が共同で」「成果を上げられるようにすること」。これがマネジメントだと説いている。成果が上がらなければマネジメントは失敗している。

成果を上げること

みんな、成果をあげようと頑張っている。それは新卒一年目であっても頑張っているし、実際にチームメンバーと一緒になって成果を上げている。であれば、これはマネジメントなんだろう。本人の好みや自覚に関わらず、誰もがマネジメントをしている。セルフマネジメントも、ティール組織も、だいたいその延長線上にある。

じゃぁ「マネジメント」を多くやるというのはどういうことなのか。 それは、「組織の考え方・行動が成果に結びつくように、より多くもがく」ことなんだと思う。

マネジメントとは、組織体に特有の機関である。

(略)

組織が決定し、行動し、ある態度をとるということは、マネジメントがそれらのことを行うということである。組織だけでは、なんら意味あることを行いえない。

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ!

一人一人が気の向くままにブラウン運動していたら成果に結びつかない。だから、ある程度の方向性・方針を示さないといけない。

もちろん絶対王政のように細かな点までルールで縛るやり方もあるし、方針を示した上で自然と個人が動き、それがチームとしての行動になるような自己組織的化を促進するやり方もある。ただ、そういったことも含め、成果に結びつかせるような戦略を考えないといけない。

もちろん、考えた結果を掲示板に貼っておくだけだと意味がなくて、それを個々人に理解してもらわないといけない。「人々と共同で」成果を上げるためには、人に向き合わないといけない。

人と向き合うこと

実際、「人と向き合おうとする」人がいないチームに混乱が発生するシーンは、幾度と見た覚えがある。ピープルウェアでも、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的なものではなく社会学的なものであると冒頭で語っている。

人が絡む問題を、政治学と呼ぼうと、社会学と呼ぼうと、次のプロジェクトでは、人に関する問題が設計、製造、開発技法のような技術的な問題よりもトラブルの原因になることは間違いない。だからこそ「人に関する問題」をこの本を貫くテーマとしたのである。

実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。

ピープルウエア 第3版

でも、複雑系の代表たる人と向き合うことはやっぱり辛いし難しい。

令和3年1年間の転職入職者が前職を辞めた理由をみると、男性は「その他の個人的理由」19.1%、「その他の理由(出向等を含む)」15.0%を除くと「定年・契約期間の満了」16.5%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」8.1%となっている。

-令和3年雇用動向調査結果の概況-

それでも、組織で成果を上げるには大事なところなんだと思う。 自分の設計や実装で成果を上げていくことよりも、まずはここに向き合っていく方が、レバレッジが効く。だからこそ打ち合わせが多くなっても、人と話して、方向性を揃えて、より多くの成果に繋げないといけない。成果を出すために働いているんだし、より大きな成果を上げるから、より多くが個々人に還元される。

マネジメントとは、仕事である。その成否は、結果で判定される。すなわち、それは技能である。しかし同時に、マネジメントは人に関わるものであり、その価値観や成長に関わるものである。すなわち、それは人間学としての人文科学である。

チェンジ・リーダーの条件―みずから変化をつくりだせ!

でもまあ、設計したり、実装したいよね。技術に触れていたい。そういう思いはずっとある。