ルベーグ積分を学ぶにあたって、まずは定義を押さえておかなければ話にならないので、本エントリで基本的なことをまとめておきます。
定義
$\sigma$-加法族
空間$X$の部分集合族$\mathfrak{B}$が次の条件を満たす時、$\mathfrak{B}$を$X$上の$\sigma$-加法族と呼ぶ。
- $\emptyset \in \mathfrak{B}$
- $E \in \mathfrak{B} \Rightarrow E^{C} \in \mathfrak{B}$
- $E _{n} \in \mathfrak{B} \;(n=1,2,\cdots) \Rightarrow \displaystyle \bigcup _{n=1} ^{\infty} E _{n} \in \mathfrak{B}$
$\sigma$-加法族は結局のところ、補集合、和集合に対して閉じた集合族のことだと言えるでしょう。
Borel集合族・Borel集合
一般の空間$X$においてその部分集合の$\sigma$-加法族をBorel集合族と呼び、その元をBorel集合と呼びます。
Borel空間
空間$X$において、その部分集合の$\sigma$-加法族$\mathfrak{B}$がBorel集合族となる時、$(X, \mathfrak{B})$をBorel空間と呼びます。
可測関数
可測空間$X$とその部分集合の$\sigma$-加法族$\mathfrak{B}$が与えられたとし、$E \in \mathfrak{B}$を固定する。 $E$で定義された関数$f(x)$が任意の実数$a$に対して集合$\lbrace x \in E \mid f(x) > a \rbrace$が$\mathfrak{B}$に属するとき、$f(x)$を$E$上の$\mathfrak{B}$-可測関数と呼びます。
測度
空間$X$とその部分集合の$\sigma$-可測関数$\mathfrak{B}$があって、$\mathfrak{B}$-集合関数$u(A)$が次の条件を満たす時、$u(A)$を$X$上の測度と呼びます。
- $0 \leq u(A) \leq \infty$、特に$u(\emptyset) = 0$ (非負性)
- $A _{n} \in \mathfrak{B}\;(n=1,2,\cdots), A _{i} \cap A _{j} = \emptyset \;(j \neq k) \Rightarrow u\left( \displaystyle \sum _{n=1} ^{\infty} A _{n} \right) = \displaystyle \sum _{n=1} ^{\infty} u\left(A _{n} \right)$ (完全加法性)
積分の定義
空間$X$とその部分集合の$\sigma$-加法族$\mathfrak{B}$、$\mathfrak{B}$上の測度$u(A)$が与えられたとする。集合$E \in \mathfrak{B}$と$E$上の$\mathfrak{B}$-可測関数$f(x)$があるとき、$f(x)$の測度$u$による$E$の上での積分$\int _{E} f(x) du$を次のように定義する。
$f(x) \geq 0$の場合
$f(x)$が単関数の場合
$f(x)$が単関数の場合、$f(x)$は次のように表されます。
$$ f(x) = \sum _{j=0} ^{n} \alpha _{j} \chi _{A _{j}} (x) \;\text{ただし} \begin{cases} E = E _{0} + E _{1} + \cdots + E _{n} \newline \alpha _{0} = 0 < \alpha _{j} \; (j \geq 1) \end{cases} $$
ここで$\chi _{A _{j}} (x)$は集合$A _{j}$上で$1$、それ以外の点で$0$をとる関数であり、定義関数と呼ばれるものです。
このような$f(x)$に対して、$\displaystyle \int _{E} f(x) du = \sum _{j=0} ^{n} \alpha _{j} u(A _{j})$と定義します。
一般の負にならない関数$f(x)$の場合
$f(x)$が$E$で可測で$f(x) \geq 0$ならば、$E$で可測で$\geq 0$なる単関数の単調増加列$\lbrace f _{n}(x) \rbrace$が存在します(単関数近似定理)。このとき、上述の単関数の積分の定義から$\displaystyle \int _{E} f _{n} du$も$n$について単調増加します。 このとき、$\displaystyle \int _{E} f(x) du = \lim _{n \rightarrow \infty} \int _{E} f _{n}(x) du$と定義します。
一般の関数$f(x)$に対して
任意の関数$f(x) \;(-\infty \leq f(x) \leq \infty)$に対して、$f ^{+}(x)=\max \lbrace f(x), 0 \rbrace, f ^{-}(x) = \max \lbrace -f(x), 0 \rbrace$とおくと、$f(x) = f ^{+}(x) - f ^{-}(x)$と表せます。定義より、$f ^{+}(x) \geq 0, f ^{-}(x) \geq 0$です。
このとき、$\displaystyle \int _{E} f(x) du = \int _{E} f ^{+}(x) du - \int _{E} f ^{-}(x) du$と定義します。