理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

測度論:ルベーグ測度と可測集合

測度とは何か

数直線$\bf{R}$においては「長さ」が定義されます。2次元空間$\bf{R} ^{2}$においては面積が、3次元空間$\bf{R} ^{3}$においては体積があります。確率空間においては確率という大きさが存在します。 このようなものを抽象化し、統一的に扱おうとしたものが測度です。

測度が満たすべき条件

集合$\bf{R}$上の点集合を$A$とし、その上に定義される測度を$m(A)$で表す時、この測度が満たすべき条件はなんでしょうか。

  1. $0 \leq m(A) \leq \infty$、特に$A=\emptyset \Rightarrow m(A) = 0$
  2. $A _{1}, A _{2}, \cdots$が互いに疎な集合であれば $m \left( \bigcup _{n=1} ^{\infty} A _{n} \right) = \sum _{n=1} ^{\infty} m(A _{n})$
  3. $m([a, b))=b-a$
  4. $A=B \Rightarrow m(A)=m(B)$

どれも直感的に正しそうな条件です。しかし、これは$R$上で必ずしも成立しない条件であることが知られており、この条件を緩めた以下の条件を満たす$m ^{\ast}(A)$を「外測度」と呼びます。

  1. $0 \leq m ^{\ast}(A) \leq \infty$、特に$A=\emptyset \Rightarrow m ^{\ast}(A) = 0$ (空集合は零集合)
  2. 単調性: $A \subseteq B \Rightarrow m ^{\ast}(A) \leq m ^{\ast}(B)$
  3. 劣加法性: $\displaystyle m ^{\ast}\left( \bigcup _{n=1} ^{\infty} A _{n} \right) \leq \sum _{n=1} ^{\infty} m(A _{n})$
  4. $m ^{\ast}([a, b))=b-a$
  5. $A=B \Rightarrow m(A)=m(B)$

外測度の定義

上記のような5つの条件を満たす定義は次のようにして与えられます。

$$ m ^{\ast}(A) = \inf \left( \sum _{n=1} ^{\infty} | I _{n} | \middle| A \subseteq \bigcup _{n=1} ^{\infty} I _{n} \right) $$

ここで$A$は任意の点集合であり、$I _{n}$は、$A \subseteq \bigcup _{n=1} ^{\infty} I _{n}$を満たす半開区間列${ I_{1}, I _{2}, \cdots }$の要素を指しています。

測度が定義できる集合

このように測度を定義したとしても、その測度を定義できる「定義域」を明確にしなければ適用範囲がわかりません。測度を定義できる集合を「可測集合」と呼びますが、任意の点集合$A$が可測(ルベーグ可測)である条件は次で与えられます。

$$ \forall B \subseteq A, \forall B' \subseteq A ^{C} \Rightarrow m ^{\ast}(B \cup B') = m ^{\ast}(B) + m ^{\ast}(B') $$

可測である条件の言い換え

$X$が任意の点集合である時、$B \equiv X \cap A, B' \equiv X \cap A ^{C}$とおくと、 $B \cup B' = (X \cap A) \cup (X \cap A ^{C}) = X$となる。これを条件式に代入すると、次の形になる。

$$ m ^{\ast}(B \cup B') = m ^{\ast} (X) = m(X \cap A) + m(X \cap A ^{C}) $$

また、$B,B'$の定義から$B \subseteq A, B' \subseteq A ^{C}$であり、元の条件を満たしています。

つまり、点集合$A$が可測集合であるとは、任意の点集合$X$に対して次の条件を満たすことであると言い換えられます。

$$ m ^{\ast} (X) = m(X \cap A) + m(X \cap A ^{C}) $$

さらに外測度が「劣加法性」を満たしていること、および、$X=(X \cap A) \cup (X \cap A ^{C})$であることを鑑みると、自動的に次のことが言えます。

$$ \begin{align} m ^{\ast}(X) &= m ^{\ast}(\left(X \cap A\right) \cup \left(X \cap A ^{C}\right)) \newline &\leq m ^{\ast} (X \cap A) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C}) \end{align} $$

従って、任意の点集合$A$が可測かどうかは、単に次の式を証明すれば良いことになります。

$$ m ^{\ast}(X) \geq m ^{\ast} (X \cap A) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C}) $$

$R$は可測集合か

-

よって、$m ^{\ast} (X \cap R) + m ^{\ast} (X \cap R ^{C}) = m ^{\ast}(R)$が成立し、$R$は可測。

$A$が可測ならその補集合は可測か

前述の通り、集合$A$が可測集合である条件は$m ^{\ast} (X) = m(X \cap A) + m(X \cap A ^{C})$ でした。この右辺の$A$を$A ^{C}$で置き換えてみます。

$$ \begin{align} m ^{\ast}(X \cap A ^{C}) + m ^{\ast}(X \cap (A ^{C}) ^{C}) &= m ^{\ast}(X \cap A ^{C}) + m ^{\ast}(X \cap A) \quad (\because (A ^{C}) ^{C} = A) \newline &= m ^{\ast} (A) \end{align} $$

従って、$A$が可測であればその補集合$A ^{C}$も可測です。

$\emptyset$は可測か

$R$が可測なので、$R ^{C} = \emptyset$も可測です。

$A,B$が可測なら$A \cup B$は可測か

$A$という前提から次が言えます。

$$ m ^{\ast}(X) = m ^{\ast} (X \cap A) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C}) $$

また、$B$が可測という条件から、次のことも言えます。

$$ \begin{align} m ^{\ast}(X \cap A ^{C}) &= m ^{\ast} (\left(X \cap A ^{C}\right) \cap B) + m ^{\ast}(\left(X \cap A ^{C}\right) \cap B ^{C}) \newline &= m ^{\ast} (X \cap A ^{C} \cap B) + m ^{\ast} (X \cap (A \cup B) ^{C}) \quad (\because \text{ドモルガンの法則}) \end{align} $$

これを$A$の前提式に代入してみます。

$$ \begin{align} m ^{\ast}(X) &= m ^{\ast} (X \cap A) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C}) \newline &= m ^{\ast} (X \cap A) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C} \cap B) + m ^{\ast} (X \cap (A \cup B) ^{C}) \end{align} $$

$(X \cap A) \cup (X \cap A ^{C} \cap B)$

ここで$(X \cap A) \cup (X \cap A ^{C} \cap B)$に着目します。

$$ \begin{align} (X \cap A) \cup (X \cap A ^{C} \cap B) &= (X) \cap (\left(X \cap A\right) \cup A ^{C}) \cap (\left(X \cap A\right) \cup B) \newline &= X \cap (X \cup A ^{C}) \cap (A \cup A ^{C}) \cap (X \cup B) \cap (A \cup B) \newline &= X \cap (A\cup B) \end{align} $$

上記式に劣加法性を適用します。

$$ m ^{\ast}(X \cap \left(A\cup B\right)) \leq m ^{\ast}(X \cap A) + m ^{\ast}(\left(X \cap A ^{C} \cap B\right)) $$

従って、$A$の前提の式であった$m ^{\ast}(X)$の式は次のようになり、$A\cup B$も可測であることがわかります。

$$ \begin{align} m ^{\ast}(X) &= m ^{\ast} (\left(X \cap A\right) + m ^{\ast} (X \cap A ^{C} \cap B)) + m ^{\ast} (X \cap (A \cup B) ^{C}) \newline &\geq m ^{\ast}(X \cap (A\cup B)) + m ^{\ast} (X \cap (A \cup B) ^{C}) \end{align} $$

$A,B$が可測なら$A \cap B$は可測か

$A, B$がそれぞれ可測なので、$A ^{C}, B ^{C}$もそれぞれ可測です。 従って、上で証明したように $A ^{C} \cup B ^{C}$も可測です。 そうすると、その補集合である$(A ^{C} \cup B ^{C}) ^{C} = (A ^{C})^{C} \cap (B ^{C}) ^{C} = A \cap B$も可測です。

$A,B$が可測なら$A - B$は可測か

$A-B=A \cap B ^{C}$であり、$B$が可測なので$B ^{C}$も可測。従って、$A-B$は可測です。