まぁ落ち着いて、まずは複素ベクトル空間の内積の定義をしておきましょう。
複素ベクトル空間の 2 つの元 に対して、複素数が対応し、次の性質を満たすとき、をとの内積という
- に対し、
- ここで、(はの共役複素数を表している)
- ここで等号は
ちなみに、を満たすとき、とは直交していると言う点は実ベクトル空間の話と代わりません。複素ベクトル空間における直交の概念は、正直、直感的に分かりにくいと感じますが。
あと、に対して正規直交基底を定義し、、に対する内積をと定義したものを、n 次元複素ユークリッド空間と言います。
直交補空間
ようやく直交補空間です。
をの部分空間としましょう。このとき、の任意の元と直交するの元全体の集合は、これもの部分空間となります。これをと書き、の直交補空間といいます。式として定義すれば、。
いま、とすると、の定義からなので、。つまり、ってことになります。
直交分解
の正規直交基底をとします。に対して
とおくと、個々のは直交し、また、そのノルムは 1 だから、
となることから、は正規直交基底を構成するベクトルと直交していることになります。すなわち、になります。
したがって、とおくと、となり、はとの成分に分解できるのです!
これを、によるの直交分解と呼びます。
直交分解に従って、をと表したとき、とおき、をからの射影作用素と呼ぶ