あ、あれ、か、解明してない…解明してない!!!!!
ISBN:4-7942-1109-0:detail
エレガントな宇宙というと、宇宙がエレガントなわけですけど、本質的な宇宙の理解を人類が得ているのかというはそれはもう断固として否なわけです。
宇宙に満ちるエネルギーのうち、人類が見知ることのできているエネルギーというのは 4 % なわけで、CERN が痕跡を掴んだという可能性が報道されたダークマターを含めても 30 %、残り 70 % を占めるダークエネルギーなんかはまだまだ理解の及ばないところにいます。
また、宇宙に年齢があるのはみなさまご存知の通りですが、では宇宙の始まりはどうやってできたのかといったところでも、ビックバン理論は宇宙誕生直後の瞬間に物理学に支障を来しますし、ではインフレーション理論はどうなのというところでも解明を見ていません。さらに、この宇宙は(ぼくたちがいる)唯一なのかという点においても、多元宇宙を否定できません。
このように宇宙の理解がまだまだなところでエレガントってどういうことなのってところですが、いやホントにエレガントだった。後半理解がおいつかない部分もありましたが、一般相対性理論と量子力学の不溶性から、ひも理論の導入、超対称性を含めた超ひも理論、そしてそこから導かれる大統一理論としての M 理論とその課題という展開はダイナミックで、おもしろい本だったと思います。
一般相対性理論と量子力学、いずれも現代物理学において成功をおさめている理論ですが、この 2 つの理論は互いに相容れないことが知られています。この 2 つの理論、互いに適用領域が異なるので通常は問題にならないんですけど、巨大重力が「極小の領域」に集中したような状況(ブラックホールとか、ビックバンの瞬間)では両論を用いざるを得なくて、うまく混ざりあいません。
そこに颯爽とあらわれるのがひも理論なわけですが、まずひも理論は証明されていない理論です。何をもって証明かという問題ももちろんありますが、少なくとも「観測」されたものではありません。
ひも理論の根本は、世界はすべて 1 次元のひもでできていて、今発見されている素粒子はひもの振動パターンであると説きます。ひもは万物を形作る素となるものであるとともに、一次元的な長さ(プランク長さの領域)があるので、それ以上の極小というものが存在しません。これによって一般相対性理論と量子力学が相容れない「極小領域」というのをうまいこと包み隠してしまいます。
この本の著者である wikipedia:ブライアン・グリーン 自身が超ひも理論の研究者ということもあり、多少のポジショントークも入っているとは思います。それでも、超ひも理論という考え方が「実はこの宇宙は 10 or 11 次元だった」という考えや、ブラックホールのエントロピーの問題を説明し得るものであること、そしてそれ以上の可能性と謎を今もなお物理学者に問いていることなど、物理学というのは何てロマンがあるんだろうなと、読んでいるあいだ中感じてました。それで M 理論ですか、5 つの超ひも理論と、11 次元超重力の統一!?どこの少年漫画だよ。