ファインマン物理学の力学 16 章、「相対論的エネルギーと運動量」まで読み終わった。
ISBN:4-00-007711-2:detail
やっぱりこの本はおもしろい。
読めば読む程に新しい発見が見つかるスルメのような本なのだけれど、そしてその事実は、ぼくが如何に物理学をしっかり理解できていなかったという事実を容赦なく突き付けてくる。それでも、「法則が成り立つことはわかった。だが、それによって何が予想できるのか」というアプローチは、無自覚に生きているこの世界にこんな秘密が隠されていたのかという宝探しにも似て、まるでトレジャーハンターになったかのような高揚感がある。
16 章ではその章題の通り、相対論的エネルギーや、相対論的な視点でのエネルギー保存則と運動量保存則にまで話が及ぶ。でも、それでもぼくは、電車の中で投げたボールは電車に乗ってない人にはどう見えるのか、という、高校物理の初歩でもある内容にまさに宝のような驚きを見出すことができた。
要するにこういうことになる。m/s で進む電車の中で m/s でボールを投げたら、電車に乗っていない人から見たボールの速さは光速を越えるのか?
もちろん越えない。少なくとも現時点での物理学では、光速を越えた速さは存在しない。そんなのが存在したら、(原理的には)静止している人は、未来予知に似た芸当が可能になってしまう。
ファインマン物理学では、wikipedia:ローレンツ変換からこれを説明していた。
静止系の座標系を、軸方向に速さで動く座標系とすると、これらの変換は以下の式となるのがローレンツ変換*1である。 はローレンツ因子としてほしい。
電車の例に立ち返れば、電車の速さは となる。電車の中の人から見たボールの速さをとする。
を代入すると、 であり、また、 である。このため、軸方向の速さは、になる。
つまり、ここにはもはや高校物理の力学の最初に習った単純な速度の合成式は通用しない。分母に という補正がつく。
この式を見ればすぐ、「見た目の速さは光速を越えられない」ことが分かる。なぜなら、光速の電車から光速のボールを投げたって、光速にしかならないからだ。
でも実際問題、光速で進む電車の中で光速で投げたボールが光速にしか見えないというのは、静止している人から見てどういう風に見えるものなのだろう。
*1:通常のローレンツ変換の式は だが、ここでは逆にしている