メールを配信するニーズは未だなお高く、僕自身も様々なメールを日常的に受け取っています。 一方でそのニーズの高さを逆手に取り、迷惑メールを配信する業者も少なくありません。結果として、「メール配信業務」には法的に様々なルールが課せられています。
では企業へのメール配信業務を有するシステムを開発する上で、どのようなことを検討しないといけないのかを調べてみました。なお、私は法律の専門家ではないので、正しいかどうかはご自身でご判断ください!
メールに関連する法律
メールに関連した法律は大きく以下の2つがあり、迷惑メール防止二法と呼ばれます。
両法律の主な違いは、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイントにまとめられており、以下に引用します。
特定商取引法
特定商取引法は、主として消費者の利益を守ることを目的としており、基本的には「事業者間」での取引にかかるメール配信は対象外と考えて良さそうです。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
事業者間での取引に関するメールは対象外と考えて良さそうな理由
まず、特定商取引法26条の定める「適用除外」の1項で、以下に該当するものは特定商取引法の定める「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」の規定を「適用しない」と記載されています。 この記述により、事業者間の契約には適用されないと解釈できるでしょう。
売買契約又は役務提供契約で、第二条第一項から第三項までに規定する売買契約若しくは役務提供契約の申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供
実際、東京商工会議所のビジネス実務法務検定試験のサンプル問題の解説に、以下の記述がありました。
なお、特定商取引法は事業者間の契約には適用されませんが(特定商取引法 26 条1項1号)、これを悪用し、小規模の個人事業者や高齢の個人事業主をターゲットにして事業者名で契約させ、特定商取引法の規制を免れようとする悪質商法が横行しました。そのため、経済産業省の通達により、一見事業者名で契約していても、その契約の主たる目的が事業のためではなく、家庭用・個人用で使用する目的であれば、原則として本法が適用されることが明確にされました。
また、消費者契約法・特定商取引法の解説をみても、以下が読み取れます。
- 特定商取引法は原則的には事業者と購入者・申込者に対して適用されること
- そして、それは契約の営利性・営業性を前提とするBtoBの場合には適用されないこと
消費者契約法の適用対象は消費者と事業者でしたが、特商法は購入者・申込者等と事業者ですので、消費者以外にも適用され得ます。契約の営利性、営業性の観点から見て、これがない場合には、いわゆるBtoBの場合でも購入者等に含まれることがあります。例えば、一般的な会社がオフィスに設置する消火器を買うなどという場合に、それがその会社の営利性、営業性と全く関係ない取引であれば、特商法の適用があり得るということです。
特定電子メール法
特定電子メール法の対象は「広告宣伝のために送信される電子メール」(広告宣伝メール)ということなので、BtoB・BtoC双方とも対象になりそうです。
この法律に関しては、前述の特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイントがわかりやすいです。 また、消費者庁にも本法律に関するガイドラインがあります。
概要は以下となるでしょう。
- あらかじめ同意した者に対してのみ、広告宣伝メールを送信できる
- つまり、オプトインされた人に対してしか広告宣伝メールは送信できない。いくつか例外規定はあります。
- 対象者がオプトインしたことのエビデンスを保存する必要がある
- エビデンスの内容及びその保存期間に関しては、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の4条に定義がある
- 保存期間は、基本的には「広告宣伝メールを最後に送信した日」から1ヶ月
- 保存内容は、同意を取得した時期、及び、方法等の状況を示す記録
- エビデンスの内容及びその保存期間に関しては、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の4条に定義がある
- オプトアウトの通知を受けた場合には、広告宣伝メールを送信してはいけない
- オプトインした事業者からのメールであることの確認のため、および、オプトアウトの通知先がわかるように、広告宣伝メール上で以下の事項を表示しておく必要がある
- 送信者の氏名あるいは名称
- オプトアウトの通知を受けるためのメールアドレスあるいはURL等。及び、オプトアウトが可能なこと。
公開されているメールアドレスに広告宣伝メールを送信できるのか
特定電子メール法においては、広告宣伝メールの送信は上述の通りオプトインを前提としていますが、公開されているメールアドレスに対してはオプトインが不要です。
この根拠は、特定電子メール法 3条4項で「メールアドレスを公表している団体または個人に対しては特定電子メールの送信が禁止されていない」こと。
第三条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。 (略) 四 前三号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)
「総務省令・内閣府令で定めるところにより」は特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則の3条が該当します。
(自己の電子メールアドレスの公表の方法)
第三条 法第三条第一項第四号の規定による自己の電子メールアドレスの公表の方法は、自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く方法とする。ただし、自己の電子メールアドレスと併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いたときは、この限りではない。
結論
まず、事業者間での宣伝通知メールを前提とすると、従うべきは特定電子メール法になります。 そこで必要なことは以下になるでしょう。
- オプトインの取得と、そのエビデンスの保存 (通常は、最後の宣伝通知メールから1ヶ月の保存が必要)
- 受信者からのオプトアウト通知の保存と、オプトアウトした人に対するメール送信の抑止
- 広告宣伝メール本文の中には、送信者の氏名あるいは名称、オプトアウトが可能なこととその方法を表示する