横軸が時間となるような時系列データは、以下の3つに分解できるという考え方があります。
種類 | 略 | 意味 |
---|---|---|
傾向変動 (循環変動を含む) | TC (Trend-cycle variation) | 基本的な長期にわたる動きを表す変動 |
季節変動 | S (Seasonal variation) | 一年を周期として循環を繰り返す変動 |
不規則変動 | I (Irregular variation) | 規則的ではない変動 |
実際の時系列データ$y_t$を上記3つでどのように組み合わせるかについては、大きく分けて乗法モデルと加法モデルがありますが、ここでは加法モデルを扱います。加法モデルでは$y_t$は以下の式で表現します。
$$ y_t = \text{TC} _{t} + S_{t} + I_{t} $$
$y_{t}$は観測値なので与えられているわけですが、右辺の各要素はわかっていません。これらは計算によって推定することになります。
傾向変動の推定
傾向変動には周期的な動きは含まれません。このため、$\text{TC}_{t}$は移動平均や指数平滑法を用いて抽出が可能です。ここでは移動平均を扱います。 ある時点$t$での値を$\hat{\text{TC}_{t}}$とすると、$k$時点前の値から$k$時点後までの$2k+1$個の値を用いて、当該の値は以下の式で表現されます。これが$(2k+1)$項移動平均ですね。 周期的なデータは、移動平均の式の中で全て「ならされる」ため、抽出されるのは長期的なデータのみ、という考え方です。
$$ \hat{\text{TC}_{t}} = \sum_{s=t-k} ^{t+k} \frac{y_{s}}{2k+1} $$
移動平均で扱う項数が奇数であれば上式で良いのですが、必ずしもそうはなりません。例えば月次での売り上げデータを考えると、その周期は12ヶ月であり、移動平均を取るべき項数は偶数になります。このような場合は端点となる項を1/2にすることで移動平均を計算します。
$$ \hat{\text{TC}_{t}} = \left(\frac{y_{t-6}}{2} + y_{t-5} + y_{t-4} + \cdots + y_{t+5} + \frac{y_{t+6}}{2} \right) / 12 $$
季節変動と不規則変動
観測値$y_{t}$から傾向変動を引いた$w_{t}=y_{t}-\hat{\text{TC}_{t}}$は、季節変動$S_{t}$と不規則変動$I_{t}$を含んでいます。月毎に$\lbrace w_{t} \rbrace$の平均をとり、平均を0とすることを目的に月別平均からそれら平均を引くことで、季節変動成分$\hat{S_{t}}$が抽出できます。
不規則変動$\hat{I_{t}}$は以下の式で求められます。
$$ \hat{I_{t}} = y_{t} - \hat{\text{TC}_{t}}-\hat{S_{t}} $$