理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

ダイオードはなぜ整流作用を持つのか

までをまとめたいと思います。絵をかくのクソみたいにメンドいから文章だけです。

半導体とは

電気的性質で物質を分類すると

  • 導体
  • 絶縁体
  • 半導体

に分けることができます。一般に、この分類基準は抵抗率であることが多いですが、これを「エネルギー帯構造」に従って分類すると、その区別はより明瞭になります。

エネルギー帯構造

孤立原子を考える場合、その電子の持つエネルギー値は不連続な値を取ります。大学(高校で学ぶ人もいる?)化学なんかで、水素原子の持つ電子が入るエネルギー準位について学ばれた方も多いのではないでしょうか。
しかし、その原子によって構成される固体を考えると話はすこし違ってきます。固体は他の原子との距離が近いので、それら影響を受けた結果、電子の入り得るエネルギー準位は孤立原子のような不連続値ではなく、(ある意味連続的な)帯構造を取ります。感覚的には、ここからここまでの帯には電子が入ることができるよ! でもここからここまではダメだね!!!!!! という感じですかね。

この電子の存在が許されるエネルギー準位の帯は「許容帯」、存在が許されない帯は「禁制帯」と呼ばれます。絶対温度 0 K においては、電子はエネルギー準位の低い許容帯から入っていきます。電子で一杯になってもう入れないような許容帯を「充満帯」、電子が入ってるけどまだ余裕がある許容帯を「伝導帯」と呼びます。伝導帯の電子は、原子の束縛から離れて自由に運動できるので、電流を構成できます。許容帯だけど電子が入っていない空の帯は「空乏帯」と呼ばれます。
あと、一番エネルギー準位の高いところに存在してる電子のエネルギー準位を「フェルミ準位」なんて呼びます。

導体、絶縁体、半導体の区別

ではまず導体とは何でしょうか。導体って電流を流そうと思えばすぐ流せるような物質だろ、という認識があると思いますが、これをエネルギー帯構造で考えると、絶対温度 0K において既に伝導帯に電子が存在するような物質を示します。結果、電圧をかけたらすぐに電子が動き、電流が発生します。
これに対し、伝導帯が存在しない(充満帯と空乏帯で構成される)のが絶縁体です。

では、半導体とは何なのか。
半導体は絶対温度 0 K では、絶縁体と同じく伝導帯は存在しません。しかし、充満帯と空乏層の間にある禁制帯は絶縁体と比べて随分と薄くなっています。結果、常温程度の熱エネルギーによって電子が励起されると、エネルギーを得た電子は余裕で禁制帯を突破し、空乏帯に入って伝導帯に変え、結果として物質は導電性を示すようになります。

あとこれは補足みたいなもんですが、温度があがるとガンガン電子が伝導帯に上がってくるようになるので、半導体の抵抗温度係数は負の値を示します。

真性半導体と不純物半導体

上で、充満帯の電子が禁制帯を飛びこして伝導帯に入るという話をしましたが、この結果、充満帯には電子の空席ができます。電子だけで満たされてた空間(充満帯)に一個空きができるので、この空席には電子 1 個分の正電荷があると考えて、これを「正孔(positive hole)」と呼んだりします。この正孔は、まわりの電子と位置を交換できる(移動できる)ので、電子と同じく電流となります。電流を運ぶという意味で、電子と正孔をまとめて「キャリア」って呼びます。

ゲルマニウムやシリコンといった純粋な半導体は、電子が伝導帯に上がると、充満帯には同数の正孔ができるので、電子密度と正孔密度は等しくなり、このような半導体を真性半導体と呼びます。
ただ、このような真性半導体の持つキャリアは、絶対温度 300 K で 10^{-9}とか10^{-12} (単位:1/m^3) といったオーダーなので、抵抗率は非常に大きいです。残念ですね。あんまり使い物にならない。

でも、ここでゲルマニウム(4 価の元素)にヒ素(5 価の元素)を加えて結晶を作ると、電子 4 個は共有結合に使われた結果 1 個の電子が余ります。この電子は簡単に自由電子になることができ、電流を流しやすくなります。つまり、不純物を入れることでキャリア(この場合は電子)を増やし、電流を流しやすくするわけですね。このようにして作る半導体が不純物半導体です。電子が主なキャリアになる半導体を「n 型半導体」、逆に正孔が主なキャリアになる半導体を「p 型半導体」と呼びます。p 型半導体は例えばゲルマニウムにインジウム (3 価の元素)を加えてつくったりします。

ようやくダイオード

さてさて、ようやくダイオードですが、ダイオードっていうのは n 型半導体と p 型半導体を結合して作ります。左から p 型、右から n 型をもってきて合体! みたいなかんじ。
じゃぁ合体させると、まず何がおこるんでしょうか。
n 型半導体には自由に動ける電子が多くありますし、p 型半導体には自由に動ける正孔が多くあります。自由に動けるものの密度が異なるものをくっつけると、当然ながら「密度をおなじくしよう」という運動、いわゆる拡散が起こります。つまり、n 型の電子は p 型の方に移動しますし、p 型の正孔は n 型の方に移動します。

ここで n 型から p 型に移動した電子に着目すると、この電子は p 型半導体に辿りつくと、すぐにたくさんの正孔に出あうことになります。正孔っていうのはそもそも電子の空席ですから、電子はこの空席を埋めて消えちゃいます。p 型から n 型に移動する正孔もおなじですね。結果として、p 型と n 型の境界付近にあったキャリアは消滅して、境界付近にはキャリアのない「空乏層」ができあがります。
さて、n 型側の空乏層は電子を失っちゃってますから全体としては正、p 型の空乏層は正孔を失っちゃってますから全体としては負に帯電*1してます。n 型側が陽極、p 型側が陰極になってるわけですね。その間に空乏層がありますから、結果としてこの空乏層には電界が生じます。
電界の向きは n 型(陽極)から p 型(陰極)ですから、これは多数キャリアによる拡散を妨げる向きの電界になってなっています。この電界によって空乏層にかかっている電圧は、そういう意味で「電位障壁」なんて呼ばれます。

この電位障壁が主キャリアの移動を妨げてしまうので、もはや電流なんてのは流せません*2。しかし、ここで外部から n 型が負、p 型が正になるように電圧を加えると、この電圧が電位障壁を打ち消し、n 型半導体の電子が p 型に、p 型半導体の正孔が n 型に移動できるようになり、電流が余裕で流れるようになります。
一方でこれと逆方向の電圧をかけると、電位障壁を高めることになるので、電流は流れません*3。これがダイオードに整流作用が起こる原理です。たぶん。

*1:用語は不適切ですが

*2:厳密にいうと、この電位障壁は少数キャリアである p 型半導体中の電子、および n 型半導体中の正孔にとっては移動を促進する方向に働きますから、わずかな電流はながれます

*3:実際には、この電圧を強くしていくと、ある閾値を越えた時点で大量の電流が流れるようになります。この現象は 2 つの原因(アバランシェ・ブレイクダウンとツェナー現象)から説明されます