積読してしまっていた、ピープルウエアを読みました。
ピープルウエアは、著者の方々の以下の課題意識に端を発したエッセイ集です。これは前書きにも、第1章の「問題の本質」にも触れられています。
実際のところ、ソフトウエア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。
ピープルウエアというのは、ソフトウェア、ハードウェア、ミドルウェアなどと同じように、人々というのは大事な資産なんだよ、という意味を込めたタイトルなのかなと思っています。 実際、この本ではソフトウェアは、多数のチーム、プロジェクト、固く結束した作業グループで開発する以上、ハイテクビジネスではなく人間関係ビジネスではないか、とも言っています。大規模プロジェクトになればなるほど、コミュニケーションや管理オーバヘッドが高くなるというのは厳然たる事実だと思っているので、身に詰まされるものがあります。
この本、基本的には「マネージャー」、「リーダー」に向けたエッセイ集だと思うのですが、結構「刺さる」言葉が多くてですね…。特に、ぼくはいわゆるマイクロマネジメントをしがちなので…。
マネージャーの役割
第5章 パーキンソンの法則の改訂
パーキンソンの法則は、 ほぼ確実にあなたの部下にはあてはまらない。
第6章 ガンによく効く? 「ラエトライル」
マネージャーの役割は、人を働かせることにあるのではなくて、人を働く気にさせることである。
wikipedia:パーキンソンの法則 には、「仕事は与えられた時間に見合うところまで膨張する」というのがあって、これは割と真であろうと思っていました。ぼく自身も、それを踏まえて多少チャレンジングなスケジュールを設定して、チーム内での創意工夫を促したことも多くあります。 この本では、その法則の正しさに疑問を唱えます。
目標値を「自分たちで」設定した方が、マネージャーが設定するよりも生産性が良くなり、さらに「全く目標値を設定しない」プロジェクトは最高の生産性を示したという結果が、103 のプロジェクトでの計測結果として示されています。 つまり、「あとはよろしく」としてチームに任せちゃった方が生産性が良くなったと。
もちろん、このような投げっぱなしジャーマンをキめるためには、いくつもの前提が必要だと思います。
- チームとしての目標がチーム全体に行き渡っている
- 個個人が自分の取り組むべき内容に誇りを持っている
- etc. etc.
ただ、こういった前提を満たすようなマネージメントをしていくことがマネージャの役割でしょうし、それができたらあとはチームを信じるっていうのが、一番良いのかなと思いました。 このポリシーは、ピープルウエアというい書籍全体で貫かれているような気がします。どれだけチームのモチベーションを「あるべき方向に」高めていくかっていうのが、マネージャーの役割なんだなと。
チームを信じる
第23章 チーム殺し、7つの秘訣
本当の意味での自主性や自由とは、マネージャーとは違ったやり方で仕事を進められるということだ。
第27章 裃を脱ぐ
トラブルが起きたときには、自分がプロジェクトのマネジメントではなく開発作業をしていれば、そんな問題は起きなかっただろうと考えるかもしれない。しかし、だからどうだというのだ? チーム編成にあたって、最適な人を最適の職務につけることに最善を尽くしたはずだ。一度決めたなら、あと知恵で変えようとしてはいけない。
第37章 混乱と秩序
「裃を脱ぐ」タイプのマネージャーは、ちょっと違った方法をとる。つまり、進んで「混乱」を小さな包みにして、部下へ渡してしまう。このタイプのマネージャーの仕事は「混乱」を小さくして配分することである。「混乱状態にあるものをキチンとする」快感を本当に味わえるのは、その包みを受け取る部下たちだ。
前述のように、ぼくはマイクロマネジメントをしがちなんですが、上記のような内容を読んで胸がチクチクしました。よく思うんですよ、「自分がこの作業をしていれば、こんな問題は起こらなかった」って。そして、 次はこういうことを繰り返さないために、みんなのすることを作業レベルで細かく把握しよう、間違っていそうなら指摘していこう、みたいなことを。
こういうのがチームに対しては癌になる。そしてその癌は、自尊心を失わせ、自主性を壊し、指示しないと動けないレベルになるまで"チーム"を殺していく。 ぼくにはきっと「信じる」ことができていないんだ、ということを身に詰まされる思いです。 何度同じことを繰り返したんだお前は、みたいな。。。自分が最善と思う準備をして、チームに任せたんだったら、あとは信じる。
理想像
第26章 スパゲティディナーの効果
最大の成功は、「マネジメント」などないかのように、チームがなごやかに一致団結して働いたときである。最良の上司とは、管理されていることを部下に気付かせずに、そんなやり方を繰り返しやれる人である。
第32章 マネジメントの究極の罪
マネジメントにおける究極の罪は、人の時間を浪費すること
確かにいるんですよね、この人がいるチーム/プロジェクトはなぜか上手くいく、って人が。 26 章では、そういう人はチームにとって何が良いか潜在的に分かっている、みたいなことが書かれていて、個人的には元も子も無えな、という感じだったんですが、その直後の 27 章にヒントがありました。
最も優れた化学反応を起こす会社では、マネージャーは健全な化学反応を生みだし、維持することに自分のエネルギーを費やす。
6 項目ほど、化学反応を生み出すことの要素がこの章で羅列されているんですが、このエントリで正しく書き下せない気もするので、それは書籍を読んでもらえば良いかなと思います。
感想
エッセイなので読みやすいし、上記のとおり色々刺さったので、読んで良かった本でした。 Joel on Software とか好きな人にはお勧めです。