Mastering Bitcoin を読みました。 たぶん原文は bitcoinbook で管理されているみたいなんですが、ぼくが読んだのは 日本語訳 の方です。
原文の方は今でもそこそこの commit がされていて、日本語訳は結構昔のものを翻訳したものだとは思うんですが、今回はまずは早めに概要を掴みたかったので。
どういう本だったのか
ぼくにとって記念すべき初の Bitcoin 本であり、初のブロックチェーン本でした。 これまで読んできたプログラミング、分散処理、アーキテクチャ、文化論といったものとはちょっと毛色が異なっていて、初物づくしだったというのがまずの読後感です。
このため、「この本がどうだ」とか、「正確な記述かどうか」とか、そういうことはぼくにはよくわかりません。 でも、だからこそ、初めての知識が詰め込まれているこの本は読んでいてすごく楽しかったです。 ぼくにとって知的興奮に満ちていた。
このエントリでは、何ら技術的なことは語りません。というか、やっぱり初物が多くて、自分の言葉でまだまだ語れない。 ただ、この本で知ることができた世界はすごく面白かったです。
どこから入ったら良いのかの道標になる
けっこう前から世の中は仮想通貨、仮想通貨ってかんじだったと思います。 その喧騒の中で、ハッキングされて盗まれたとか、コールドウォレットにしてなかったんかいとか、マルチシグに対応しとけやとか色々言われてもいました。 でも、ぼくはそういう報道の中でもなかなか全容が掴めないままでしたし、それを追おうという気も起こりませんでした。
これが何故だったかというと、やっぱり新しいんですよね。一部が新しいなら良いんです。大部分が新しい。 算数を知らずにいきなり圏論の世界に入ったかのような、そういう感覚。
だからこそ、「どこから入れば良いのか」という取っ掛かりがなかったんだと思います。この本は、そういうぼくの引き込もりがちな傾向を打ち破るのに非常に良い本でした。
本の中では、イントロでは平易な言葉でそのモデルを語りつつ、だんだんと Bitcoin のプロトコルにまで踏み込みます。 秘密鍵はどう保持していくのか、Bitcoin のアドレスはどう生成するのか、どうやって何十 GB のブロックチェーンの同期を実現していくのか、fork はどうやって防がれるのか。 新書の類で語られる概観だけでなく、その方法がプロトコルレベルで語られるのは、技術として「Bitcoin」を捉えようとするときにすごく分かりやすかった。
新しい世界観
もちろん、全部が全部あたらしいわけではなくて、秘密鍵や公開鍵、分散処理、いくつも知った言葉はでてきます。 でも、それらを組み合わせ、個個人の利便性、マイナーの思惑、分散台帳の中で実現されるコンセンサス、予め上限の決まった貨幣量といったものが入り混じりながら説明される世界観は驚きに満ちていました。
良くできた SF は「現実の一部が僅かに違っていたらどういう世界が構成されるのか」を説得力とともに示してくれますが、通貨という世界でもそれが起こるのだなというのを実証された感覚。 情報技術によってかくも世界が再構成されるのだという、これまでに培ったシステム観を一変させるものがありました。
これから、すこしだけそういう部分を垣間見ることになるかもしれないのですが、すごく楽しみです。