理系学生日記

おまえはいつまで学生気分なのか

ベータ関数とガンマ関数の関係

統計学では$\chi ^2$分布に関して次のことが言えるとされています。

確率変数$Z _{1}, Z _{2}, \cdots, Z _{n}$が互いに独立に標準正規分布$N(0,1)$にしたがうとき、$W=\sum _{i=1} ^{n} Z _{i} ^{2}$の従う分布を自由度$n$の$\chi ^{2}$分布と呼び、$\chi ^{2} (n)$と表す。

これを証明すべく、ガンマ関数の性質 - 理系学生日記に引き続き、ベータ関数とガンマ関数の関係式を証明します。

証明したい関係式

今回のエントリで証明したい関係式は、ベータ関数$B(x,y)$に関する次の式です。

$$ B(x,y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)} $$

ここで、ベータ関数$B(x,y)$の定義は次式です。

$$ B(x,y) \equiv \int _{0} ^{1} t ^{x-1} (1-t) ^{y-1} dt $$

また、おさらいですがガンマ関数$Gamma(x)$の定義は次式となります。

$$ \Gamma(x) = \int _{0} ^{\infty} t ^{x-1} e ^{-t} dt $$

まずはベータ関数の性質を押さえる

今日のエントリの証明のために、ベータ関数の次の性質を明らかにします。

$$ \begin{align} B(x,y) &= B(y,x) \newline B(x,y) &= 2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2y-1} \theta \sin ^{2x-1} \theta d\theta \end{align} $$

2つ目の式は、ベータ関数の極座標での表現ですね。

$B(x,y) = B(y,x)$

改めて、ベータ関数の定義を示します。

$$ B(x,y) \equiv \int _{0} ^{1} t ^{x-1} (1-t) ^{y-1} dt $$

$B(x,y) = B(y,x)$を証明するために、$u = 1-t$と置きます。このとき、$du = -dt$です。また、$t$が$0 \rightarrow 1$へ動く時、$u$は$1 \rightarrow 0$へと動きます。

これを踏まえて、ベータ関数$B(x,y)$を$u$で置き換えると、簡単に証明できます。

$$ \begin{align} B(x,y) &\equiv \int _{0} ^{1} t ^{x-1} (1-t) ^{y-1} dt \newline &= \int _{1} ^{0} (1-u) ^{x-1} u ^{y-1} (-du) \newline &= \int _{0} ^{1} u ^{y-1} (1-u) ^{x-1} du = B(y,x) \newline \therefore B(x,y) &= B(y,x) \end{align} $$

$B(x,y) = 2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2y-1} \theta \sin ^{2x-1} \theta d\theta$

ベータ関数に関して、$t=\sin ^{2} \theta$と置きます。

このとき、$dt = 2 \sin \theta \cos \theta d \theta$です。また、$t$が$0 \rightarrow 1$と動く時、$\theta$は$0\rightarrow \frac{\pi}{2}$へ動きます。

これをベータ関数の式に適用すると次のようになります。

$$ \begin{align} B(x,y) &\equiv \int _{0} ^{1} t ^{x-1} (1-t) ^{y-1} dt \newline &= \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \sin ^{2x-2} \theta (1 - \sin ^{2} \theta) ^{y-1} \cdot 2\sin \theta \cos \theta d\theta \newline &= 2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2y-1} \theta \sin ^{2x-1} \theta d \theta \end{align} $$

これがベータ関数の極座標形式ですね。

また、$B(x,y) = B(y,x)$ であることも考慮すると次のようにも表せます。

$$ B(x,y) = 2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2x-1} \theta \sin ^{2y-1} \theta d\theta $$

いよいよ本題の証明

これで準備が整ったので、いよいよベータ関数とガンマ関数の関係式を証明します。

$$ B(x,y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)} $$

まずは$\Gamma(p)$から攻めましょう。

ガンマ関数の別の表現

$$ \Gamma(p) = \int _{0} ^{\infty} t ^{p-1} e ^{-t} dt $$

に関して、$t=x ^2$と置換します。このとき$dt = 2xdx$です。 また、$t$が$0 \rightarrow \infty$で動くとき、$x$も同じ範囲を動きます。

これを$\Gamma(p)$に適用すると、ガンマ関数の別の表現形式が導けます。

$$ \begin{align} \Gamma(p) &= \int _{0} ^{\infty} t ^{p-1} e ^{-t} dt \newline &= \int _{0} ^{\infty} x ^{2(p-1)} e ^{-x ^{2}} 2x dx \newline &= 2 \int _{0} ^{\infty} x ^{2p-1}e ^{-x ^{2}} dx \end{align} $$

では$\Gamma(p) \Gamma(q)$は?

先ほど導いたガンマ関数の別表現を使い、$\Gamma(p) \Gamma(q)$を計算してみます。

$$ \begin{align} \Gamma(p) \Gamma(q) &= \left(2 \int _{0} ^{\infty} x ^{2p-1}e ^{-x ^{2}} dx\right)\left(2 \int _{0} ^{\infty} y ^{2q-1}e ^{-y ^{2}} dy\right) \newline &= 4 \int _{0} ^{\infty} \int _{0} ^{\infty} x ^{2p-1} y^{2q-1} e ^{-(x ^{2} + y ^{2})} dxdy \end{align} $$

$x ^{2} + y ^{2}$が出てきたので、極座標の出番です。$x = r\cos \theta$、$y = r\sin \theta$で置換しましょう。

$x,y$がそれぞれ$0\rightarrow \infty$へ動くとき、$r,\theta$はそれぞれ$0 \rightarrow \infty, 0 \rightarrow \frac{\pi}{2}$へ動きます。

さらに、この変数変換のヤコビアン$J$は次の式で表せます。

$$ \begin{align} |J| &= \det \begin{vmatrix} \frac{\partial x}{\partial r} & \frac{\partial y}{\partial r} \newline \frac{\partial x}{\partial \theta} & \frac{\partial y}{\partial \theta} \end{vmatrix} \newline &= \det \begin{vmatrix} \cos \theta & -r \sin \theta \newline \sin \theta & r \cos \theta \end{vmatrix} \newline &= r \cos ^{2} \theta + r \sin ^{2} \theta \newline &= r \end{align} $$

よって、$dxdy = r dr d\theta$となりますね。

これを$\Gamma(p) \Gamma(q)$の式に適用しましょう。

$$ \begin{align} \Gamma(p) \Gamma(q) &= 4 \int _{0} ^{\infty} \int _{0} ^{\infty} x ^{2p-1} y^{2q-1} e ^{-(x ^{2} + y ^{2})} dxdy \newline &= 4 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \int _{0} ^{\infty} ( r ^{2p-1} \cos ^{2p-1} \theta )( r ^{2q-1} \sin ^{2q-1} \theta) e ^{- r^{2}} r dr d\theta \newline &= \left(2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2p-1} \theta \sin ^{2q-1} \theta \right)\left( 2 \int _{0} ^{\infty} r ^{2p-1} \cdot r ^{2q-1} r \cdot e ^{- r^{2}}dr\right) \newline &= \left(2 \int _{0} ^{\frac{\pi}{2}} \cos ^{2p-1} \theta \sin ^{2q-1} \theta \right)\left( 2 \int _{0} ^{\infty} r ^{2(p+q) -1} \cdot e ^{- r^{2}} dr\right) \end{align} $$

そして証明へ

この式を、ベータ関数の極座標形式、ガンマ関数の別の表現、および$B(x,y)=B(y,x)$を利用して変形します。

$$ \begin{align} \Gamma(p) \Gamma(q) &= B(q,p)\Gamma(p+q) = B(p,q)\Gamma(p+q) \newline \therefore B(p,q) &= \frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)} \end{align} $$

これで、求めるべき関係式が証明できました。