振り返ると、就職面接ではほぼ常に「今まで/大学生活で、一番頑張ったことはなんですか」という質問が出るそうです。ぼくが就職面接を受けたのは全部で 6 社で母数が少ないのですが、いずれもこの質問があったように記憶しています。
ぼくはこの手の質問には「勉強です」と即答していました。今ぼくが勤めている会社での面接では、この回答に対してさらに以下のように質問が続きます。
- どの教科が好きだったんですか。
- 数学です。
- 数学ではどの分野が。
- 群論です。
ぼく自身は編入生なので、群論と出会ったのは大学 3 年のときでしたが、世の中にはこんな数学があるものかと、衝撃を受けたことを強く記憶しています。工業数学に偏っていたからか、それまでのぼくの数学は三角関数や微積分、線形空間やベクトルといった、(正確な表現ではないのは承知ですが)具体化されたものを対象にするものでした。
しかし、群論や環論との出会いは、そんなぼくの数学観を一変してしまいました。抽象化を重ねて辿りついた高みから世の中を俯瞰される感覚、細かな議論をすっ飛ばしてもなお議論できる性質。大学にもう一度入る機会があるならば、数学科に入りたいと今でも思っています(そしてその次は、物理学科で高エネルギー物理を専攻したい…)。
というわけで、ときおりに群論や環論の教科書を図書館で借りては勉強したりしたのですが、結城さんの Blog から、数学ガールの次の対象はガロア理論であるという情報を察知、今か今と指折り数えていたところでようやく発売の運びとなったようです。速攻で買ったったわ。
ISBN:978-4-7973-6754-6:detail
数学ガールにおけるガロア理論は、最終章である 10 章において、ガロアの第一論文をなぞる形で説明されます。ここで取り上げられている内容を一言で言えば「方程式が代数的に解ける必要十分条件はなにか」。
そしてそこに至るまでの全 9 章で、置換群、巡回群、対称式や角の三等分問題、ラグランジュ・リゾルベントといった、10 章の説明に必要なパーツが平易な言葉で準備されているといった構成です。
群論や環論の教科書の内容を覚えておられる方なら特に分かると思いますが、抽象化と一般化を重ねて議論されるこの手の数学は、「自分が今どこに向かっているのか」を容易に見失いがちです。一つ一つの証明の意味を考えだすと、なぜその証明を今しているのか、この証明によって得られる定理をどの証明の部品として使うのかが分からなくなります。
定理と証明で埋められた教科書を読みとりつつ、「ぼくは一体どの方向に進んでいるのか」のコンパスが示されない、そういった方向感覚の欠如こそがもっとも厄介だというのが、ぼくが群論や環論を学ぶにあたって強く抱いた問題でした。
また、結城さんがガロア理論を取り上げるにあたって、粉骨砕身したのもやはりそのあたりなんじゃないかと思います。違う問題を取り上げているようで、所々に触れられる群や体、方程式の解、そしてミルカさんの説明に対してユーリやテトラちゃんが発する質問が羅針盤となって、素直に読み進めることができました。
教科書も、このくらいの遊び心があって良いとおもうよ。証明の厳密さは損ってほしくないけど。
やっぱり数学楽しいなー、もっと勉強したいなー。はー。