来年度からOKRを採用しようと言うことで、まずはMeasure What Mattersを読みました。
本自体の構成はOKRを導入した各社の事例からOKRの特徴や威力が説明され、その後で変化するマネジメントの中でOKRがどう役立つかを事例から示すという構成になっています。 事例からの説明は現実に本当に起こったことであるが故にリアリティを持ち心躍る内容である一方で、「結局OKRって?」という答えがなかなか説明しづらいように思いました。 これが「OKRを知るには、とりあえずこの本を読め」と言われる理由なのかなとも感じます。
OKRを知るには、書籍の中で紹介されている以下のサイトも参考になりそうなので、両者をみながら自分の考えをまとめてみます。 ちなみに、CFR (Conversation, Feedback, Recognition)はちょっと難しいのでまた別途。
OKRとは何か
OKRはObjective(目標)とKey Results(主要な結果)の頭文字を取ったもので、会社内の組織が同じ重要課題に全力で取り組めるようにするものとされています。 このうちObjectiveは「何を」達成すべきか、Key ResultsはObjectiveを「どのように」達成するかをモニタリングする基準になります。
OKRで得られるもの
OKRで得られるものは「F.A.C.T.S.」と言われ、以下の5つとされています。 なんのためにOKRをやっているのかと問われたら、F.A.C.T.S.を手に入れるため、と返せば良さそうというのがぼくの理解。
- Focus
- 「次の3ヶ月(半年や1年でも良い)で重要な事柄に集中する」とともに、重要でないことも明確にする。組織が勝つために必要な優先事項への集中をもたらす
- Objectiveは少ない方が良いとされ、7つ未満であるべきだし、1つのObjectiveに対するKey Resultsは5つ未満であるべき
- 書籍ではObjectiveは3-5個、Key Resultsは5個以下となっている。上の数字はWhat Matters: Benefits of OKRs: What are they?から持ってきた
- Alignment
- マネージャーやコントリビューターなど全員が自らの日々の活動を会社の戦略と結びつけること
- すべてのコントリビューターが組織の成功と結びつくことで、仕事へのやりがいが生まれる
- ボトムアップのOKRは従業員の責任感を高、エンゲージメントとイノベーションを促す
- Commitment
- 合意されたOKRを達成し、そのためにスケジュールやリソースの調整を確かにすること
- 全チームメンバーはOKRに向けて邁進しているということを、他者に対して明確に示さなければならない
- Tracking
- すべてのOKRは、それを書いた時に定義したメトリクスでトラックしなければならない
- 主観を排し、責任を明確にすることが目的
- Stretching
- 限界に挑戦させ、失敗を許容することで、想像力と野心を最大限に解き放つ
OKRの要諦
これは書籍の中でまとめられていることなのだけれど、以下とされています。 ぼくには「あぁこれは組織的にOKRに取り組もうとした時にだんだんとずれてくるポイントだな」と感じられました。定期的に見返し、自分たちがずれていないかを確認するのが良さそうです。
- 絞り込む
- 一握りの目標を厳選する。Focusのことを言っているはず
- 目標はボトムアップで
- 全ての目標をトップダウンで設定すると意欲が削がれるので、上司と相談してOKRの半分は自分で決めさせると良い
- 押し付けない
- OKRは優先事項と進捗をどのように測るかの社会契約であり、目標達成を最大限促すには協力的な合意形成が不可欠
- 常に柔軟な姿勢で
- 事業環境の変化や目標が明確でなかったり妥当性を失った場合は、サイクルの途中でも「Key Results」の修正、廃棄が可能
- 失敗を恐れない
- 絶対に達成しなければならないものもあるが、野心的OKRは困難で達成できない可能性もあるものにすべき
- 手段であって、武器ではない
- リスクテイクを促し、力の出し惜しみを防ぐには、OKRとボーナスは切り離す方が良い
- What Matters: Why You Should Divorce Compensation From OKRsも参照
- 辛抱強く、決然と
- システムが軌道に乗るまでには4-5四半期のサイクルを繰り返す必要がある
心に残ったこと
Focus
来期の最優先事項はなんだろう?われわれは何にエネルギーをフォーカスすべきだろうか。効果的な目標設定システムは、経営トップの規律ある思考から始まる。 リーダーは何が重要か選択することに、時間とエネルギーを注がなくてはならない。
OKRはトップダウンとボトムアップを並立させるのが良いとよく言われます。
書籍の中でも「うまく機能している組織では、トップダウンとボトムアップの目標、すなわちアラインメントされたOKRとアラインメントされていないOKRの関係が自在に変化する。」という言葉があります。
しかしそれでも、上位層〜リーダー層の思考と覚悟のある選択と決断は重要です。
Focusするということは、短期的には他を切り捨てると言うこと。What Matters: Benefits of OKRs: What are they?にもOKRs really force upfront choice-making
という
記載があります。
ぼくは選択・決断よりも作業と多忙に逃げがちなので、ここは自分の責任を果たさないといけないと思った次第。
リーダーの率先垂範
CEOが「私の目標はすべて会社の目標と同じだ」と言うのは、まずいサインだ。元インテュイットCEOで、その後グーグルの経営陣のコーチとなった故ビル・キャンベルの言葉を引用しよう。「会社のCEOあるいは創業者は『これをやろう』と宣言したうえで、率先垂範しなければならない。自ら範を垂れなければ、誰もやらない」
目標が困難なものであるほど、投げ出そうとする誘惑は強くなる。上司の目標設定とその遂行ぶりを、部下は当然見ている。嵐のなかを行く船から将校が真っ先に逃げ出せば、船員がその船を港に戻そうと努力するだろうか。
OKRを成功させるにはリーダーの姿勢を全社員に言葉と行動で示す必要があり、自らがOKRへのコミットメントを示す必要がある。 組織・チームの成果を出すのがマネジメントと言われますが、OKRはManageするためではなくLeadするために使えと言う示唆があります。
自分たち自身で「マネジメント」ではなく「リード」する姿を見せないと、組織にOKRを浸透させられない、ということだと理解しいました。
誤解を招きそうなポイントなので補足しておきます。
ここでの「リーダー」は職位を意味しません。
Leaders chart a path and help answer the question: “what’s next?” They are focused on growth, innovation, and defining where the company needs to shift or stretch. You do not need to have a “title” to be a leader—it is a way of thinking and approaching problems. What Matters: Leader vs. Manager: What's the Difference?
OKRはマネージャー不要を言っているのではなく、リーダーとマネージャーの双方が必要だと言っています。
Successful teams often have both types of executives; the skills of management and leadership working in conjunction to strive for the audacious. What Matters: Leader vs. Manager: What's the Difference?
協力関係
OKRシステムの下では、組織の末端にいる社員でも、CEOを含めた全員の目標を見られる。
人は見えないものと連携することはできない。だから縦割り組織ではネットワークは機能しない。OKRはもともとオープンで、組織のあらゆる部署、そのなかのあらゆる階層に属する人が見られるようになっている。
かつては2つの技術チームが独立して作業を進め、それぞれのプログラム・マネジャーに報告し、マネジャー同士が「上から」両チームを連携させようとした(うまくいくこともあれば、いかないこともあった)。実際に作業をしている社員同士は直接連絡を取り合わなかった。水平的な透明性を備えたOKRが存在する今、技術チームの目標は互いに結びついており、意識的に連携しようとするようになった。四半期ごとに部門の目標に照らして進捗を確認すると同時に、どうすれば他チームと一番良いかたちで連携できるかを考える。私たちは上級幹部の指示を待つ組織から、真に自律的な組織へと変化しつつある。
縦割りの中での協力関係の構築は本当に面倒ですが、ぼくはOKRのもたらす一体感と協調にはとても期待をしています。 Alignmentが手に入れば、おなじところを目指す仲間は確実にいるわけです。そういった仲間を「公開されたOKR」の中から見つけ、スクラムを組める。 これが「組織」だよなという気分。
ミッションと目標の違い
慈善事業の世界では「目標」と「ミッション」を混同する人があまりに多い。ミッションとは進むべき方向を示すものだ。一方、目標とは意識的に取り組み、達成を目指す具体的ステップである。野心的目標を設定するのは構わないが、それをどう評価するのか、どのような測定方法があるのかが重要
ごめんなさい。
ムーンショット
「たいていの人は、いろいろなことをはなから不可能だと思い込む傾向がある。現実世界の物理学から出発し、本当は何が可能かを確かめようともしない」
しかしラリー・ペイジも言うように、「とんでもなく野心的な目標を設定すれば、たとえ達成できなくても、何かすばらしいことを成し遂げられるはずだ」。 星に手を伸ばせば、たとえつかめなくても、月には手が届く。
失敗するかもしれないOKRを書くのは勇気が要るが、最高の成果を出したければ、そうするよりほかはない。
ごめんなさい。
自立
OKRの文化とは、自ら責任を負う文化だ。目標に向かって努力するのは、上司に命令されるからではない。すべてのOKRが会社にとって、そして自分を信頼してくれている仲間にとって重要であることがはっきりわかるから
個々人のコントリビューションに光が当たるのはとても良いです。 「あなたはこれから何をするのか」「あなたは何をしたのか」が明確になると、いろんな光と闇が見えてくるはずです。光の部分だけでなく、闇の部分も乗り越えて、組織が一体になれると良いですね。