今年も人事から声をかけて頂いたので、今年も就活生一同に偉そうに話をするんだーって思って会場に行って偉そうな話をした。
ぼく自身は就活生の頃、現場のエンジニアとかに会って話を聞きたいっていうのは思わなかった。その頃のぼくの中では、会社というのは一枚岩であって、同じ空気を共有していて、人事の人を通して会社の中を見通せるものだと思ってた。もちろん全部見通すことができるなんて非現実的なことはおもっていなかったのだけれど、それでも、人事の人を話を聞けば十分だとはおもってた。
そういう意味ではぼくの当時の考えは非現実的だったんだとおもう。
会社、というか、規模が大きくなった集団というのはどこでもそうなんだと思う。まずグループができる。グループとグループの間に敷居ができる。もともとは低くて、隣が何をやってるかなんて簡単に見えてたはずなのに、いつのまにかその敷居って高くなって、なにやってんのか分からなくなる。で、なにやってるのかだけじゃなくて、どんな雰囲気なのかもわからなくなる。
部署がちがうと「誰にたいして」仕事してるのかもちがったりする。特定のエンタープライズだったり、本当の意味でのエンドユーザだったり、あるいは社内プロジェクトだったりする。与えられたミッションも違ってて、会社利益のことなんか気にせず好きに技術やってるところもあるし、プロジェクト毎の収支を徹底的に管理してるところもある。
そういうのの集合体が会社で、人事という部署もその集合体の中の一部署になる。だから、学生さんが就活で触れる「会社の雰囲気」というのは、実際には、そして一般には、その会社の、人事部の雰囲気であって、汎化できるものじゃない。ミッションだって、会社のミッションが部署レベルに分断されて個別最適になってしまうと、会社全体としてどこに向かってるのか、次第にわからなくなっていく。会社入った後に配属された先で、「あー就活のとき言われたことと同じだー」ていう人もいると思うけど、それは幸せな例だと思う。
会社っていう粒度、特にそれなりの規模の企業になると、説明に適した粒度じゃないとおもう。
ちょっと話逸れるけど、入った会社の名前で自尊心を満たす目的でない限り、会社名で就職先を選ぶと失敗しがちだと思う。ぼくはどこの会社に入りたいですだと失敗しそうだとおもう。ぼくはどこの会社で何がやりたいです、があってはじめて、具体的な職場の雰囲気がつかめるようになるとおもうし、意味ある情報が聞けるとおもう。大学入試では「どこの大学で」は当然として「何を勉強したいです」まで決めた上での入口なのに、就職活動では「どこの会社で」という粒度でしか臨まないのは、そもそも退化してるかんじがする。
で本題に戻って、それを決めてる学生さんに対して意味ある情報を提供するのが会社説明会みたいな場だとおもう。どうも一般論として、就職活動にもフェーズっていうものがあって、
- "この会社"というものを紹介するフェーズ 1
- "この会社" の "あなたが取り組む仕事" にフォーカスして紹介するフェーズ 2
っぽい。
このあたりがクリアだったらまだ分かりやすいとおもうのだけれど、フェーズ 1 とかフェーズ 2 とかあったとしてもわりとゴチャゴチャになるとおもう。部署、グループあたりの粒度が発するものなのに、会社としての雰囲気ととらえられてしまうとミスマッチがスゴいとおもう。「職場の雰囲気はどうですか」ってよく聞かれるけど、ここでの職場の定義がぼくは「自分の部署」であるのに対して、きっと学生さんは「会社」なんだろうなって思いながら答えてる。部署によって違うんだけど、って枕詞はつけるようにしてるけど、伝わってるか不安になる。
そもそも、
- 会社というのは同じミッションを共有すべきだし同じベクトルを共有すべき、とか、
- 部署の雰囲気は違っても良いにせよ、そういう違いがあることやその個々の話についてちゃーんと学生に伝えることが説明会における人事の役割
みたいなそもそも論もあるとおもうけど、人間いろいろ無理なことがあって、こういうのはそういう「無理なこと」なんだとおもう。こういう「無理だとおもうこと」っていうの増えてきて、ぼくも歳をとったんだなっておもう。